【No365】福祉医療機構による優遇融資の拡充
令和7年4月8日に、厚生労働大臣は会見を行い、医療機関や介護施設において物価高騰や賃金上昇により経営状況が悪化していることを踏まえ、医療機関等に対する独立行政法人福祉医療機構(以下、「福祉医療機構」という。)の融資を大幅に拡充することを発表しました。今回の発表によると、一定の要件を満たす場合には新たに無利子期間が設けられることとなりました。今回の医業経営FPNewsでは、拡充された優遇融資の内容についてご案内します。
1.融資対象となるための要件
ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出の有無によって、融資を受けるための要件が変わります。こちらについては、過去の医業経営FPNews No.319において詳しくご案内しております。
(1)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がある場合
①お申込みされる施設(拠点)における、申込時点で提出可能な直近月の試算表を、その前年または前々年と比較し経常利益(経常増減差額、当期経常増減額など)が減少していること。
または、法人全体の直近決算年度において経常利益が赤字となっていること。
②お申込み時に経営改善計画書を提出し、融資後 2 年間において当該経営改善計画書の履行状況を報告すること。
(2)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がない場合
お申込みされる施設(拠点)における直近1年以内の物価高騰等の影響を受けた月の試算表を前年または前々年と比較し、
①経常利益(経常増減差額、当期経常増減額など)が減少していること。
②人件費や減価償却費等を除いた事業費用(サービス活動費用、医業費用、支出など)が増加していること。
独立行政法人福祉医療機構
「物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金の取扱いに係るQ&A」Q&A4引用
2.融資額の上限
ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出の有無によって融資額の上限が変わります。
(1)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がある場合
次の①~②のうち、いずれか低い額が融資限度額となります。
なお、②については医療貸付のみの適用要件となります。
①担保評価額×80%(診療報酬債権担保の場合は100%)
※無担保の場合は500万円と直近事業収益の2か月分を比較し高い額
②病院 7.2億円
老健・介護医療院 1億円
診療所等 4,000万円
(2)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がない場合
次の①~③のうち、いずれか低い額が融資限度額となります。
なお、③については医療貸付のみの適用要件となります。
①物価高騰等の影響を受けた月(原則直近1年以内)と前年同月などと比較した際の費用増額の24倍
②担保評価額×80%
※無担保の場合は500万円が融資限度
③病院 7.2億円
老健・介護医療院 1億円
診療所等 4,000万円
独立行政法人福祉医療機構
「物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金の取扱いに係るQ&A」Q&A6引用
3.償還期間および据置期間の年数
ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出の有無によって償還期間及び据置期間が変わります。
(1)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がある場合
償還期間は最長10年、据置期間は償還期間のうち最長2年となります。
また、医療貸付事業においては次の①又は②の要件を満たす場合は、据置期間は最長5年となります。
①医療施設等経営強化緊急支援事業実施要綱(令和7年2月12日医政発0212第5号)による病床数適正化支援事業について事業計画の提出をした施設
②地域医療構想会議調整会議において合意を得て、地域ニーズを踏まえた再編・転換等を行う施設
(2)ベースアップ評価料・処遇改善加算の届出がない場合
償還期間は最長10年、据置期間は償還期間のうち最長1年6ヶ月となります。
独立行政法人福祉医療機構
「物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金の取扱いに係るQ&A」Q&A7引用
4.無利子期間の有無
ベースアップ評価料・処遇改善加算を届け出ている医療機関において、無利子期間が設けられました。無利子期間の対象となる融資限度額は、直近の事業収益の2か月分(融資限度額を上回る場合は融資限度額)までとし、当初2年間無利子となります。
また、医療貸付事業においては次の①又は②の要件を満たす場合は当初5年間無利子となります。
①医療施設等経営強化緊急支援事業実施要綱(令和7年2月12日医政発0212第5号)による病床数適正化支援事業について事業計画の提出をした施設
②地域医療構想会議調整会議において合意を得て、地域ニーズを踏まえた再編・転換等を行う施設
独立行政法人福祉医療機構
「物価高騰の影響を受けた施設等に対する経営資金又は長期運転資金の取扱いに係るQ&A」Q&A8引用
5.さいごに
ベースアップ評価料・処遇改善加算を届け出ている場合、直近事業収益の2か月分を最大5年間無利子・無担保(いわゆる「ゼロ・ゼロ融資」)で受けることができます。しかしながら、上記の要件を満たせば自動的に「ゼロ・ゼロ融資」が受けられるわけではありません。福祉医療機構による審査があり、その結果によっては融資が受けられない場合もあります。
申請を検討される場合は、福祉医療機構のウェブサイトで詳細な情報や申請手続きについて確認し、不明な点は直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
(文責:税理士法人FP総合研究所)