【No342】後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養と後発医薬品のロードマップについて
令和6年10月1日より、後発医薬品がある薬で先発医薬品(長期収載品)の処方を希望する場合は、特別の料金を加算する仕組みが導入されております。また、令和6年9月30日に厚生労働省は「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」を策定・公表しました。今回の医業経営FPNewsでは、後発医薬品を取り巻く状況についてご案内します。
1.後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
令和6年10月1日より、後発医薬品がある薬で先発医薬品(長期収載品)の処方を希望する場合は、特別の料金を加算する仕組みが導入されました。従来、保険給付の対象となっていた部分のうち、一部が患者の自己負担となるため、患者への影響が大きな仕組みとなっています。
(1)特別の料金とは
特別の料金とは、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金のことをいいます。後発医薬品が複数存在する医薬品の場合は、薬価が一番高い後発医薬品と先発医薬品の価格差で計算します。
上記のとおり、今後、後発医薬品がある薬で先発医薬品(長期収載品)の処方を希望する場合は、通常の1~3割の患者自己負担とは別に、特別の料金を加算して支払うこととなります。なお、特別の料金の計算対象となるのは薬剤料のみであり、診療料や調剤料、処方料、処方箋料の費用は従来と変更ありません。
医療機関における取り扱いは下記のとおりです。
院内処方の場合:上記選定療養に該当する場合は、医療機関において特別の料金を徴収します。
院外処方の場合:上記選定療養に該当する場合は、調剤薬局において特別の料金を徴収するため、医療機関においては、処方箋に先発医薬品(長期収載品)の銘柄名を記載した上で、医薬品ごとに「患者希望」欄に「レ」又は「×」を記載します。
厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」参照
(2)後発医薬品との価格比較リストについて
先発医薬品(長期収載品)を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について、「後発医薬品との価格比較リスト」が厚生労働省のホームページに掲載されておりますのでご確認ください。
(3)特別の料金の課税関係
特別の料金は消費税の課税売上げとなります。通常の1~3割の患者自己負担は消費税の非課税売上げであることから、医療機関の窓口では異なる税区分の料金を同時に受け取ることとなるため、管理には注意が必要です。
厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」参照
2.安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップについて
(1)概要
後発医薬品を適切に使用していくための取り組みを整理し、現下の後発医薬品を中心とした医薬品の供給不安に係る課題への対応を行うため、平成25年に策定した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ (旧ロードマップ)」を改訂し、新たに「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」を策定しました。
厚生労働省「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」参照
(2)数値目標
主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを令和11年度末までに全ての都道府県で80%以上(旧ロードマップから継続)
副次目標①:令和11年度末までに、バイオシミラーが80%以上を占める成分数が全体の成分数の60%以上
副次目標②:後発医薬品の金額シェアを令和11年度末までに65%以上
厚生労働省「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」参照
(3)取組施策
①安定供給・国民の信頼確保に向けた取組
○品質確保に係る取組
・医薬品医療機器総合機構と都道府県による、リスクの高い医薬品製造所に対する、合同による、無通告立入検査の実施【令和5年度開始】
・全ての後発医薬品企業による、製造販売承認書と製造実態に係る自主点検の実施【令和6年度実施】
・日本ジェネリック製薬協会を中心とした、外部研修や人事評価等による、クオリティカルチャー醸成に向けた、企業の人材育成【令和6年度開始】等
○安定供給に係る取組
・供給不足が生じるおそれがある場合(供給不安報告)又は生じた場合(供給状況報告)に、企業が厚労省へ報告する制度を整備【令和6年度開始】
・後発医薬品企業による、安定供給に係る情報の公表【令和6年度開始】
・自社の供給リスクを継続的に把握・分析することを可能とする、医薬品企業向けのマニュアルの作成【令和6年度実施】
・市場参入時に安定供給確保を求め、医薬品の需給状況の把握・調整を行うほか、供給不安発生時には供給不安解消策を講じる「安定供給確保に係るマネジメントシステム」の法的枠組の検討【令和6年度結論】
・日本ジェネリック製薬協会は、安定供給責任者会議を開催し、安定供給に係る各企業の好事例や競争政策上の観点に留意しつつ供給不安解消に向けた企業間での情報共有等を促す【令和6年度開始】等
②新目標の達成に向けた取組
○使用環境の整備に係る取組
・的を絞った使用促進を可能とするため、数量ベースに加え、金額ベースでの薬効分類別等の後発医薬品置換率情報の提供【令和6年度開始】
・都道府県協議会を中心として、金額ベースでの薬効分類別等の後発医薬品置換率も参考に、後発医薬品の使用促進を実施【令和6年度開始】
・都道府県医療費適正化計画への、後発医薬品の数量・金額シェア、普及啓発等の施策に関する目標や取組の設定等による、後発医薬品の使用促進【引き続き実施】
・差額通知事業の推進による、患者のメリットの周知【引き続き実施】等
○医療保険制度上の事項に係る取組
・長期収載品について、保険給付の在り方を見直し、選定療養の仕組みを導入【令和6年10月から開始】
・後発医薬品の供給状況や医療機関や薬局における使用状況等も踏まえ、診療報酬における後発医薬品の使用に係る評価について引き続き中央社会保険医療協議会等で検討【引き続き実施】等
厚生労働省「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」引用
(文責:税理士法人FP総合研究所)