【No340】社員販売・社員割引に関する税務上の取扱いについて

医療機関においても患者向けに販売されているものと同じ商品や施術等を、使用人や役員に対していわゆる社員販売・社員割引という名目で、通常よりも低い価額で提供するケースが存在します。今回の医業経営FPNewsでは、社員販売・社員割引を行った際の税務上の取扱いについてご案内致します。

1.所得税法上の原則的な取扱い

使用人に対して社員販売・社員割引があると、使用人は当該商品・サービス等を一般販売価額よりも低い価額で購入できたことになります。

この場合、従業員は当該差額分だけ「経済的利益」を受けているとみなされ、原則として「現物給与」として所得税の課税対象となります。

国税庁 タックスアンサーNo/2508「給与所得となるもの」参照

2.課税しない経済的利益(商品、製品等の値引販売)

使用者が役員又は使用人に対し自己の取り扱う商品、製品等(有価証券及び食事を除く。)の値引販売をすることにより供与する経済的利益で、次の要件のいずれにも該当するものについては、課税しなくて差し支えないとされています。

(1) 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと。

(2) 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること。

(3) 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること。

国税庁 所得税基本通達 36-23参照

3.課税しない経済的利益(用益の提供等)

使用者が役員若しくは使用人に対し自己の営む事業に属する用役を無償若しくは通常の対価の額に満たない対価で提供し、又は役員若しくは使用人の福利厚生のための施設の運営費等を負担することにより、当該用役の提供を受け又は当該施設を利用した役員又は使用人が受ける経済的利益については、当該経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合又は役員だけを対象として供与される場合を除き、課税しなくて差し支えない。

国税庁 所得税基本通達 36-29より引用

このように用益の提供等があった場合の経済的利益については、商品・製品等の値引販売とは異なり、明確な形式基準による要件がありません。

4.消費税法上の取扱い

消費税は、原則として、課税資産の譲渡等の対価の額が課税標準となります。したがって、社員販売の相手が使用人の場合は、実際の販売価額に対して消費税が課税されます。

一方で、社内販売の相手が役員の場合は、「無償」ないし「著しく低い価額」により資産の譲渡等があったときは、譲渡時の時価を基準に消費税が課税されます。

なお、その譲渡した資産が棚卸資産である場合で、その棚卸資産の譲渡金額が、その資産の仕入金額以上の金額で、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上の金額であるときは、著しく低い金額により譲渡した場合には該当しないものとして取り扱われます。

消費税における著しく低い金額により譲渡した場合と所得税における著しく低い価額とは形式上の基準が異なるため注意が必要です。

国税庁 タックスアンサーNo.6321「法人の役員対する贈与・低額譲渡の取扱い」参照 

3.さいごに

この他にも使用人や役員に対して福利厚生という名目で行った商品やサービスの提供が税務上の要件を満たしていないことから、経済的利益とみなされて課税される場合があります。

実施しようとする福利厚生制度が課税しない経済的利益に該当するか否かについては、所得税基本通達等で要件を確認する必要があります。

 

 

(文責:税理士法人FP総合研究所)