【No338】令和7年度厚生労働省の主な税制改正要望について

令和6年8月30日に厚生労働省は「令和7年度厚生労働省税制改正要望について」を公表しました。今回の医業経営FPNewsでは主な税制改正要望について抜粋して取り上げます。

1.医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度の延長等(所得税・法人税) 延長

(1)現状

医療提供体制の確保のため、医療機関が取得した機器について、昭和54年度に特別償却制度を創設し、令和元年度に充実されています。

①医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度(令和元年度創設)

【対象設備】医師等勤務時間短縮計画に基づき取得した器具・備品(医療用機器を含む)、ソフトウェアのうち一定の規模(30万円以上)のもの

【特別償却割合】取得価格の15%

②地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度(令和元年度創設)

【対象設備】地域医療構想調整会議において合意された医療機関の具体的対応方針に基づき、病床再編等のために取得又は建設(改修のための工事によるものを含む)をした病院用又は診療所用の建物及びその附属設備(既存の建物を廃止し新たに建設する場合・病床の機能区分の増加を伴う改修(増築・改築・修繕又は模様替)の場合)

【特別償却割合】取得価格の8%

③高額な医療用機器(取得価格500万円以上)に係る特別償却制度(昭和54年度創設)

【対象機器】高度な医療の提供に資するもの又は医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内の医療機器

【特別償却割合】取得価格の12%

(2)要望等

医療提供体制の確保のため、①医師及びその他医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度、②地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度、③高額な医療用機器に係る特別償却制度について、適用期間を2年延長する。

厚生労働省「令和7年度主な税制改正要望の概要」P2より参照・引用

2.医療・介護DXの推進に伴う税制上の所要の措置(所得税・法人税等) 新規・拡充

(1)現状

 ・「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年6月21日閣議決定)では、より質の高い効率的な医療・介護を提供する体制を構築するとともに、医療データを活用し、医療のイノベーションを促進するため、政府を挙げて医療・介護DXを確実かつ着実に推進することとされています。

・医療・介護DX推進に向けて以下の事項について、検討を行っています。

 ①「全国医療情報プラットフォーム」※1の構築及び当該プラットフォームで共有される情報を新しい医療技術の開発や創薬等のために二次利用する環境の整備

 ②医療介護の公的データベース※2のデータ利活用の促進

 ③医療・介護DXを推進するための体制整備(社会保険診療報酬支払基金の改組)等

※1 オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診情報に加え、介護保険・母子保健、予防接種、自治体検診、電子処方箋情報、電子カルテ等の保健・医療・介護の情報を共有・交換できる全国的なプラットフォーム。

※2 NDB、介護DB、DPCDB、障害福祉DB、予防接種DB、感染症DB、難病DB、小慢DB,全国がん登録DB等

(2)要望等

医療・介護DXの推進に向け、医療介護のデータ利活用の方針及び基盤整備、システム開発、運用主体のあり方等について、社会保障審議会等での検討結果等を踏まえて、税制上の所要の措置を講じることとしています。

厚生労働省「令和7年度主な税制改正要望の概要」P3より参照

3.医薬品・医療機器等の規制に関する制度の見直しに伴う税制上の所要の措置(所得税・法人税等) 新規・拡充

(1)現状

・医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)については、令和元年改正法の附則において、施行後5年を目途として、改正後の法律に検討を加え、その結果に基づいて必要措置を講ずるものとされています。

・この検討規定に基づき、改正法の施行状況を踏まえた更なる制度改善に加え、人口構造の変化や技術革新等により新たに求められる対応を実現する観点から、医薬品・医療機器等の規制に関する制度の見直しに向けた検討を進めています。

・具体的には、本年4月より、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会(以下「制度部会」という。)において、以下の4つのテーマを中心に検討を行っています。

①ドラッグロスや供給不足などの医薬品等へのアクセスの課題に対応した安全かつ迅速な承認制度の確立

 ②新技術による医薬品等にも対応したリスクに基づく市販後安全性対策の強化、法違反事例を踏まえた更なる法令遵守や品質確保の取組の実施

③国民からの信頼性確保に向けた体外診断用医薬品・医療機器の規制の見直し

④少子高齢化やデジタル化の進展等に対応した薬局・医薬品販売制度の見直し

(2)要望等

・今後、制度部会において、夏頃に議論の整理を行い、秋以降、更に検討を進め、年内を目途に取りまとめを行う予定としていますが、制度部会における議論によっては、税制改正が必要となる見直し事項が生じる可能性があります。

・制度部会における見直しの検討結果に基づき、医薬品・医療機器等の規制に関する制度の見直しに伴う税制上の所要の措置を講じることとしています。

厚生労働省「令和7年度主な税制改正要望の概要」P4より参照

(文責:税理士法人FP総合研究所)