【No331】医療現場におけるマイナ保険証利用時の課題について

現行の健康保険証はマイナンバーカードを基本とする仕組み(マイナ保険証)へ移行し、令和6年12月2日から健康保険証の新規発行がされなくなります。マイナ保険証の普及が徐々に進む一方で、医療機関側ではマイナ保険証利用の際に様々な課題が発生しています。それぞれの課題の「対応策」「解決策」をまとめた動画が、7月19日に厚生労働省から配信されました。

この動画は、医療現場から多く寄せられている質問を踏まえて解説・回答するセミナーとなっています。今回はこの動画の内容について、動画内の投影資料を中心にご案内します。

1.医療現場での利用時において

課題①

・健康保険証は有効なのにマイナ保険証で「無効」と表示される。

・保険資格の確認ができず10割負担での請求を行う。

<解決に向けた対応(資料1・資料2・資料3)>

・転職や転居等により資格変更があった際に新しい資格情報が迅速に登録されるよう、昨年6月に省令改正を行い、資格取得の届出から5日以内(資格変更から10日以内)にシステム登録を求めているが、更に保険者に対し、迅速化を図るために改善計画の策定を求め、フォローアップ調査を実施

オンライン資格確認未登録のままマイナ保険証を使ってしまう事態を回避するために、①データ登録までの期間の周知、②登録が終わったことを通知する仕組みを導入

資料1

資料2

資料3

課題②

・顔認証付きカードリーダーが起動しない。

・顔認証付きカードリーダーで顔認証ができない。

<解決に向けた対応(資料1・資料2・資料4)>

・カードリーダーの起動時の不具合は、顔認証付きカードリーダーやPC(資格確認端末)の日々のシャットダウン、スケジューラー機能の利用により、定期的に電源のオン・オフ(シャットダウン・再起動)を行うことで解消

・顔認証時の読み取りエラーは、カードを袋にいれたまま置く、カメラに近づき過ぎる、逆光や外光の影響を受けることなどが主な原因であり、エラー時の対応について周知

資料4

課題③

 ・電子証明書の有効期限が切れるとマイナ保険証として使えなくなる。

<解決に向けた対応(資料1・資料5)>

・電子証明書の有効期間の3か月前からJ-LISより更新手続きのご案内が送付されるほか、有効期限満了日まで3か月以下の場合には顔認証付きカードリーダーの画面上で更新のアラート表示を行っている。

・本年12月より、電子証明書の有効期間満了後3か月間は、引き続き資格確認を行えるよう対応。また、12月2日以降は、有効期限満了日から更新なく一定期間経過した場合には、資格確認書を職権交付。

資料5

上記①~③の課題をクリアしてもなお、マイナンバーカードでオンライン資格確認が行えない場合

・「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や過去の受診歴から確認した資格情報で請求を行う。

・被保険者番号等が不詳でも本人に資格申立書を記載いただき「不詳レセプト」として請求を行う。

その上で、マイナ保険証を持参した患者に対して、紙の保険証の提示がなくとも適切な自己負担割合(3割等)の支払を求めるよう周知

(資料1・資料2・資料3)

2.マイナ保険証の利用推進について

課題④

従来マイナ保険証の利用が進んでこなかった理由の1つに紐付け誤りの問題があり、マイナ保険証を利用した際に別の人の情報が誤って表示されるということで国民にマイナ保険証に対する不信感を与えてしまいましたがこの紐付け誤りへの対応はどのようになっているか。

<解決に向けた対応(資料6)>

(登録済みデータの点検)

・全ての登録済みデータ(1.6億件)について、住民基本台帳情報との突合を完了【令和5年11月】。確認が必要な約139万件について閲覧停止をしたうえで、保険者等による確認作業を終了【~令和6年4月】

(新規の誤り事案の発生を防止)

・今後の新規加入者の登録時に、全てのデータについて住民基本台帳情報とのシステムによる突合を実施【令和6年5月7日~】

※資格取得届における個人番号等の記載義務を法令上明確化。やむを得ず保険者が住民基本台帳情報を取得して加入者の個人番号を取得する場合には、必ず4情報(漢字カナ氏名、生年月日、性別、住所)により照会を行うことを明確化【令和5年6月~】

資料6

厚生労働省 徹底解決!マイナ保険証への医療現場の疑問 解消セミナー引用及び参照 

3.さいごに

今回ご案内した課題以外でも、医療現場では資格確認に時間・手間を要することへの受付スタッフの負担増について、不安の声があがっています。また、発熱外来を実施している医療機関など、オンライン資格確認端末を2台以上利用する必要がある医療機関への対応も未定です。これらも踏まえて、今後、厚生労働省には医療現場の声を更にくみ取ったマイナ保険証の利用推進方法を検討することが期待されます。

 

(文責:税理士法人FP総合研究所)