【No326】「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024の原案」について

 令和6年6月11日の第8回経済財政諮問会議で、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024の原案」が示されました。今回の医業経営FP Newsでは医療・介護分野に関連がある主な項目について一部抜粋してご案内します。

1.医療・介護・こどもDX

第2章『社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現』の「3.投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応」の中で、医療・介護・こどもDXの推進、マイナ保険証への移行が明記されています。

 医療・介護の担い手を確保し、より質の高い効率的な医療・介護を提供する体制を構築するとともに、医療データを活用し、医療のイノベーションを促進するため、必要な支援を行いつつ、政府を挙げて医療・介護DXを確実かつ着実に推進する。このため、マイナ保険証の利用の促進を図るとともに現行の健康保険証について本年12月2日からの発行を終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、「全国医療情報プラットフォーム」を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHRの整備・普及を強力に進める。また、次の感染症危機に備え、予防接種事務のデジタル化による効率化を図るとともに、ワクチン副反応疑い報告の電子報告を促し、予防接種データベースを整備する等、更なるデジタル化を進める。当該プラットフォームで共有される情報を新しい医療技術の開発や創薬等のために二次利用する環境整備、医療介護の公的データベースのデータ利活用を促進するとともに、研究者、企業等がデータを安全かつ効率的に利活用できる基盤を構築する。医療DXに関連するシステム開発、運用主体として、社会保険診療報酬支払基金について、国が責任を持ってガバナンスを発揮できる仕組みを確保するとともに、情報通信技術の進歩に応じて、迅速かつ柔軟な意思決定が可能となる組織へと抜本的に改組し、必要な体制整備を図るほか、医療・介護DXを推進し、医療費適正化の取組を強化するための必要な法整備を行う。また、医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策を着実に実施する。電子処方箋について、更なる全国的な普及拡大を図る。あわせて、子育て支援分野においても、保育業務や保活、母子保健等におけるこども政策DXを推進する。また、これらのDXの推進については、施策の実態に関するデータを把握し、その効果測定を推進する。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024(原案)P12」より引用

2.医療・介護サービスの提供体制等

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「3.主要分野ごとの基本方針と重要課題」にある、「全世代型社会保障の構築」の「医療・介護サービスの提供体制等」では、医師の偏在是正に向けた「総合的な対策のパッケージ」の策定が明記されています。

 高齢者人口の更なる増加と人口減少に対応するため、限りある資源を有効に活用しながら、質の高い効率的な医療・介護サービスの提供体制を確保するとともに、医療・介護DXの政府を挙げての強力な推進、ロボット・デジタル技術やICT・オンライン診療の活用、タスクシフト/シェア、医療の機能分化と連携など地域の実情に応じ、多様な政策を連携させる必要がある。 

 国民目線に立ったかかりつけ医機能が発揮される制度整備、地域医療連携推進法人・社会福祉連携推進法人の活用、持続可能なドクターヘリ運航の推進や、地域で安全に分べんできる周産期医療の確保、都道府県のガバナンスの強化を図る。地域医療構想について、2025 年に向けて国がアウトリーチの伴走支援に取り組む。また、2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える 85 歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る。

  医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、医師確保計画を深化させるとともに、医師養成過程での地域枠の活用、総合診療医の育成、リカレント教育の実施等の必要な人材を確保するための取組、経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大等の規制的手法を組み合わせた取組の実施など、総合的な対策のパッケージを 2024 年末までに策定する。あわせて、2026 年度の医学部定員については2024 年度の医学部定員を超えない範囲で維持するとともに、今後の医師の需給状況を踏まえつつ、2027年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに行う。 

 人口減少による介護従事者不足が見込まれる中で、医療機関との連携強化、介護サービス事業者のテクノロジーの活用や協働化・大規模化、医療機関を含め保有資産を含む財務情報や職種別の給与に係る情報などの経営状況の見える化を推進した上で、処遇の改善や業務負担軽減・職場環境改善が適切に図られるよう取り組む。また、必要な介護サービスを確保するため、外国人介護人材を含めた人材確保対策を進めるとともに、地域軸、時間軸も踏まえつつ、中長期的な介護サービス提供体制を確保するビジョンの在り方について検討する。 

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024(原案)P38」より引用

3.医療・介護保険等の改革

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「3.主要分野ごとの基本方針と重要課題」にある、「全世代型社会保障の構築」の「医療・介護保険等の改革」では、現役世代の負担の上昇を抑制する観点から、審査支払機関による医療費適正化の取り組みの強化、多剤重複投薬や重複検査等の適正化を推進することが明記されています。

 給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、関連法案の提出も含め、各種医療保険制度における総合的な検討を進める。こうした改革を進めるに当たっては、審査支払機関による医療費適正化の取組強化、多剤重複投薬や重複検査等の適正化に向けた実効性ある仕組みの整備を図り、国民健康保険制度については、都道府県内の保険料水準の統一を徹底するとともに、保険者機能の強化等を進めるための取組を進め、人口動態や適用拡大による加入者の変化等を踏まえ、医療費適正化や都道府県のガバナンス強化等にも資するよう、調整交付金や保険者努力支援制度その他の財政支援の在り方について検討を行う。また、国際比較可能な保健医療支出統計の整備を推進する。

 介護保険制度について、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直し、ケアマネジメントに関する給付の在り方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、第10期介護保険事業計画期間の開始の前までに検討を行い、結論を得る。あわせて、高齢者向け住宅の入居者に対する過剰な介護サービス提供(いわゆる「囲い込み」)の問題や、医療・介護の人材確保に関し、就職・離職を繰り返す等の不適切な人材紹介に対する紹介手数料の負担の問題などについて、報酬体系の見直しや規制強化の更なる検討を含め、実効性ある対策を講じる。また、深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024(原案)P39」より引用

4.働き方に中立的な年金制度の構築等

第3章『中長期的に持続可能な経済社会の実現』の「3.主要分野ごとの基本方針と重要課題」にある、「全世代型社会保障の構築」の「働き方に中立的な年金制度の構築等」は、公的年金制度改正は2024年末までに道筋を付けることが明記されています。

 公的年金については、働き方に中立的な年金制度の構築等を目指して、今夏の財政検証の結果を踏まえ、2024年末までに制度改正についての道筋を付ける。勤労者皆保険の実現のため、企業規模要件の撤廃を始め短時間労働者への被用者保険の適用拡大の徹底、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消等について結論を得るとともに、いわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用促進と併せて、制度の見直しに取り組む。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024(原案)P41」より引用

  5.今後のスケジュール

 「経済財政運営と改革の基本方針」は、政府の経済財政政策に関する基本的な方針を示すとともに、経済、財政、行政、社会などの分野における改革の重要性とその方向性を示すものです。今後、当該原案を基に与党内の議論を経て今月中に閣議決定する見通しです。

 

(文責:税理士法人FP総合研究所)