【No322】雇用保険法等の一部を改正する法律の概要

令和6年2月に、政府は雇用保険の適用拡大などが盛り込まれた「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を国会に提出し、令和6年5月10日にこの法案が可決されました。今回の医業経営FPNewsではこの改正についてご案内致します。

1.改正の趣旨

多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずることを目的として、本改正が行われています。

厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 改正の趣旨」参照

2.改正の概要

(1)雇用保険の適用拡大【雇用保険法、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律】

雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大することとされています。なお、これにより新たに雇用保険の被保険者及び受給資格者となる者については、求職者支援制度の支援対象から除外しないこととされています。

医療機関では、週10時間程度でダブルワークをされる看護師などの職種の方も多いですが、現在、雇用保険は複数の事業所では同時に加入することはできません。そのため、主たる賃金を受ける雇用関係にある事業所のみで加入することになりますので、主たる事業所となった医療機関は、雇用保険料が増額することも考えられます。 

(2)教育訓練やリ・スキリング支援の充実【雇用保険法、特別会計に関する法律】

①自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、 給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにするとされています。また、自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月としていますが、1か月に短縮するとの通達も発出される予定です。

②教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げるとされています。また、教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付(10%)が新たに創設されます。

③自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金が創設されます。

(3)育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保【雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律】

①育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置が廃止されます。本来は給付費の1/8の負担ですが、暫定措置で1/80とされていました。 

②育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%) 、保険財政の状況に応じて引き下げられる(0.5%→0.4%)ようにするとされています。 ①・②により、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整するとされています。

なお、現在の0.4%とは、雇用保険料率の労働者負担0.6%・事業所負担0.95%のうち、それぞれ0.2%ずつ含まれています。

(4)その他雇用保険制度の見直し【雇用保険法】

教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等を実施するとされています。 

厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 改正の概要」参照

3.施行期日

令和7年4月1日(ただし、2.(3)①及び(4)の一部は公布日、2.(2)②は令和6年10月1日、 2.(2)③は令和7年10月1日、2.(1)は令和10年10月1日)

厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 施行期日」参照

(文責:税理士法人FP総合研究所)