【No313】医療機関における寄附金について
今回は、医療機関が寄附金を支出したときの取扱いについてご案内します。
1.個人が支出した寄附金の控除
国や地方公共団体、特定の法人などに寄附をした場合は、確定申告を行うことで、所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。
・個人が特定寄附金(国又は地方公共団体、公益団体等といった団体に対して行った寄附金 )を支出したときは、寄附金控除として所得金額から差し引かれます。
・個人が支出した政治活動に関する寄附金のうち政党若しくは政治資金団体に対する寄附金又は個人が支出した認定NPO法人等若しくは公益社団法人等に対する寄附金については、(1)寄附金控除(所得控除)の適用を受けるか、(2)寄附金特別控除(税額控除)の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができます。
(1)寄附金控除(所得控除)
寄附金控除は次の算式で計算します。
(その年中に支出した特定寄附金の額の合計額)-(2千円)=(寄附金控除額)
注:特定寄附金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度です。
(2)寄附金特別控除(税額控除)
①政党等寄附金特別控除は次の算式で計算します。
(その年中に支出した政党等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×30%=(政党等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て
②認定NPO法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。
(その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×40%=(認定NPO法人等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て
③公益社団法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。
(その年中に支出した公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の額の合計額-2千円)×40%=(公益社団法人等寄附金特別控除額)
◎100円未満の端数切捨て
注1:①~③の寄附金の額の合計額は原則として所得金額の40%相当額が限度です。
注2:①の特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。②及び③の特別控除額の合計額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。
注3:上記(1)及び(2)の算式中の2千円は、特定寄附金等の額がある場合には2,000円からその特定寄附金等の合計額を控除した残額とされます。
なお、住民税においては、以下の寄附金についてのみ税額控除が受けられます。
①都道府県・市町村に対する寄附金(ふるさと納税)
②住所地の共同募金会・日本赤十字社に対する寄附金
③都道府県・市町村が条例で指定する寄附金
2.法人が支出した寄附金の控除
国や地方公共団体への寄附金と指定寄附金(公益法人等に対する寄附金で、一定の要件を備えるものとして財務大臣が指定したもの)はその全額が損金になり、それ以外の寄附金は一定の限度額までが損金に算入できます。
法人が支出した寄附金については、一定の範囲内で損金に算入されます。
(1)国等に対する寄附金及び指定寄附金
国や地方公共団体に対する寄附金及び指定寄附金は、その支払った全額が損金に算入されます。
(2)特定公益増進法人等に対する寄附金
特定公益増進法人に対する寄附金、特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭及び認定NPO法人等に対する寄附金のうち一定の要件を満たすものは、その合計額と次の特別損金算入限度額とのいずれか少ない金額が損金に算入されます。
注1:資本金等の額は、資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額をいいます。
注2:所得の金額は、支出した寄附金の額を損金に算入しないものとして計算します。
注3:特定公益増進法人等に対する寄附金のうち損金に算入されなかった金額は、下記(3)の一般の寄附金の額に含めます。
(3)上記以外の寄附金(一般の寄附金)
上記(1)及び(2)に該当しない寄附金(一般の寄附金)は、下記の損金算入限度額までが損金に算入されます。
ただし、基金拠出型医療法人では、拠出金は資本金ではないことから、上記(2)及び(3)における資本金等の額は0円として計算することになります。
国税庁ホームページ「基金拠出型の社団医療法人における基金に関する法人税の取扱いについて」参照
なお、法人が行う地方公共団体に対する寄附(企業版ふるさと納税)については、最大60%の税額控除を受けることができます。
3.医師連盟会費について
個人で支出した場合には所得税法上の必要経費としては認められない旨の判例が出ております。
医療法人が支出した場合においては、法人税法上、2.(3)の一般の寄附金に該当するものと考えられます。
国税不服審判所(平13.3.30裁決、裁決事例集No.61 129頁)参照
(文責:税理士法人FP総合研究所)