【No310】電子処方箋管理サービスの運用について

 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)による電子処方箋の仕組み(以下「電子処方箋管理サービス」という。)が構築されました。それに伴い、厚生労働省より「電子処方箋管理サービスの運用について」(令和4年10月28日付け薬生発1028第1号医政発1028第1号保発1028第1号厚生労働省医薬・生活衛生局長・医政局長・保険局長通知)が発出されております。

 このたび、令和5年12月28日に一部内容が改正されました。そこで、今回の医業経営FPNewsでは「電子処方箋管理サービスの運用について」の内容を一部ピックアップしてご案内します。なお、電子処方箋の概要等につきましては、医業経営FPNews№222№249№271№279でも詳しくご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

1.主な項目

(1)処方箋の電子化のメリット

①医療機関、薬局における主なメリット   

(イ) 薬局でオンライン服薬指導を実施する際、紙の処方箋の原本を医療機関から薬局に郵送する代わりに、薬局が処方箋を電子的に取得可能となる。

(ロ) 一元的に処方内容・服薬状況を把握することによって、多剤投与の適正化による有害事象のリスク低減や、患者背景の推察、他施設の受診状況の把握による最適な治療の提供等を図ることができる。

②患者や家族における主なメリット

(イ) オンライン診療の際、医療機関が発行した処方箋の原本を電子処方箋管理サービスに登録することで処方情報が電子的に保存され、患者は処方情報をマイナポータルを通じて閲覧することが可能となる。また、患者は、薬局での受付前に処方情報をより簡便に薬局に伝達することができるようになり、薬局での待ち時間の短縮が期待される。

(ロ) オンライン服薬指導の際、患者は薬局へ電子処方箋管理サービス内にある処方情報を電子的に伝達することが可能となるほか、薬局での調剤情報が電子的に保存・蓄積されることで、患者自らが実際に調剤された情報をマイナポータル等を通じて閲覧できる。

(2)電子処方箋の運用に当たっての留意点

① 医療機関は、オンライン資格確認の際に、顔認証付きカードリーダにおいて、患者が電子処方箋の交付を希望していることを確認する。あわせて、同端末において、処方・調剤情報の参照に関する閲覧同意を取得する。処方箋の発行形態(電子処方箋又は紙の処方箋)の確認については同端末で行うことを主たるケースとして想定としているが、診察時など上記に限らず行うことができることとする。

 患者がマイナンバーカードの健康保険証利用をしていない場合や、汎用カードリーダを用いてマイナンバーカードで資格確認をする場合は上記の対応ができないことから、口頭等で電子処方箋の交付希望について確認する。その際、処方・調剤情報の参照に関する個人同意は顔認証付きカードリーダにおいて取得できる運用を基本としており、口頭等で同意を取得したからといって同様に情報を参照できることにはならないことに留意する必要がある(汎用カードリーダを用いてマイナンバーカードで資格確認をする場合は、書面で個人同意を取得することも可能)。
 なお、当該患者が調剤を受けようとしている薬局が電子処方箋に対応しているか否かについては、厚生労働省ホームページにおいて公表されている対応薬局リストや、厚生労働省から配布されたポスター等を活用し、待合室等で患者が当該情報を確認できる環境を整えておく必要がある。その際、フリーアクセス確保の観点から、特定の薬局に誘導してはならない。

② 医師・歯科医師は、処方内容が適切であるか確認するために、処方・調剤情報の参照(同意が得られている場合)及び重複投薬又は併用禁忌の有無の確認(同意の有無にかかわらず可能)を実施する。なお、処方・調剤情報の参照の同意が得られていない場合は、重複投薬又は併用禁忌の有無については、該当する医薬品の重複・禁忌という事象のみを表示するに留め、重複等の対象となった薬剤名称や医療機関・薬局の名称等は表示しない。ただし、重複投薬等チェック機能により、重複投薬又は併用禁忌が確認された場合であって、口頭等で同意を取得した場合には、重複投薬又は併用禁忌の要因となった薬剤に係る一部の情報を参照することができる。なお、その場合には、口頭等で同意を取得した旨について、電子カルテ等に記録すること。

(3)リフィル処方箋への対応

 リフィル処方箋は、症状が安定している患者に対して、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下で、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組みである。医療機関でリフィル処方箋としての電子処方箋を発行する場合には、医療機関のシステムが対応している必要があるが、発行に係るプロセスはリフィル処方箋ではない電子処方箋と概ね同様である。総使用回数を適切に選択の上、発行すること。 

(4)患者への説明と理解を求める取組

 医療機関・薬局では、患者に対して電子処方箋の運用への理解を求めることが重要であり、電子処方箋管理サービスの運用に当たっては、患者に対し適切に電子処方箋の内容や利点等を説明できるよう、厚生労働省ホームページに掲載している説明用のリーフレット、国民・患者向けの動画等を適宜活用すること。また、医師、歯科医師や薬剤師等の医療従事者や医療機関・薬局の事務担当者は、厚生労働省が公表している医療機関・薬局向けの動画等を参照して電子処方箋の運用の理解を深めること。
 患者が自由に調剤を受ける薬局を選択できるよう、厚生労働省において電子処方箋に対応した薬局をホームページに掲載しているため、適宜これを活用すること。また、厚生労働省から提供するポスターを待合室等に掲示するなどして、患者へのわかりやすい説明に努めること。

厚生労働省「電子処方箋管理サービスの運用について」参照

2.電子処方箋管理サービス等関係補助金の申請について

 令和6年1月時点での利用開始に向けたスケジュールは以下の図のとおりです。

厚生労働省「電子処方箋 全体概要(病院・診療所向け)」より画像引用

 令和6年3月31日までに電子処方箋管理サービスを導入した医療機関等においては、拡充した補助率が適用されます。また、それ以降につきましては、令和7年3月31日までに電子処方箋管理サービスの導入を完了した上で、令和7年9月30日までに申請した場合、補助金交付の対象となります。補助金の交付額については以下の図のとおりです。

医療機関等向けポータルサイト「電子処方箋管理サービス等関係補助金の申請について」より画像引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)