【No308】「労働条件明示のルール変更」について
令和6年もさまざまな法改正が予定されておりますが、今回の医業経営FP Newsでは令和6年4月1日から施行される労働条件明示の制度改正の概要についてご案内します。
これを機に、現状の労働条件通知書の労働条件の明示事項等について改めて確認し、令和6年4月以降に対応する雇用契約書などのひな型を準備する必要があります。
1.制度改正のポイント
(1)全ての労働者に対する明示事項
①就業場所・業務の変更の範囲の明示
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」※1についても明示が必要になります。
※1「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
(2)有期契約労働者に対する明示事項等
①更新上限の明示
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。併せて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になります。
②無期転換申込機会の明示
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※2に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。
③無期転換後の労働条件の明示
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと※2に、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。併せて、無期転換後の労働条件を決定するに当たって、就業の実態に応じて、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。
※2 初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、今回の改正による無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
厚生労働省 リーフレット『2024年4月からの労働条件明示のルールが変わります』より引用
厚生労働省『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』より引用
2.モデル労働条件通知書
厚生労働省が公表しているモデル労働条件通知書の主な変更箇所は以下の図表のとおりです。
なお、就業場所・業務の変更の範囲や有期労働契約に関する更新上限の内容等の今回の改正内容に関するもの以外に、「就業規則を確認できる場所や方法」という項目が追加されています。
『令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A』Q5-1において、この項目の追加は、労働基準法施行規則の改正に基づくものではないとありますが、就業規則については、労働基準法により労働者への周知が義務付けられているものであり、就業規則を備え付けている場所等を本通知書に記載する等して必要なときに容易に確認できる状態にする必要があることを明らかにしたところです。
厚生労働省パンフレット『2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?』P20より引用
3.既に雇用されている労働者について
今回の改正を受けて、既に雇用されている労働者に対して、改めて新たな明示ルールに対応した労働条件明示をする必要はありません。 新たな明示ルールは、今般の省令・告示改正の施行日である令和6年4月1日以降に締結される労働契約について適用されます。 もっとも、労働条件に関する労働者の理解を深めるため、再度の明示を行うことは望ましい取組と考えられます。 また、有期契約労働者については、契約の更新は新たな労働契約の締結であるため、令和6年4月1日以降の契約更新の際には、新たなルールに則った明示が必要となります。
厚生労働省『令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A』Q1-1参照
(文責:税理士法人FP総合研究所)