【No304】医師の働き方改革について

 働き方改革の一環として、労働基準法の改正により時間外労働の上限が法律に規定され、2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。

一方で、医業に従事する医師については、長時間労働の背景に、業務の特性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間猶予され、2024年4月から一部特例つきで適用されることとされています。今回は、この医師の働き方改革における新たな制度についてご説明します。

1.改革の背景

 これまでの我が国の医療は医師の長時間労働により支えられており、今後、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少が進む中で、医師個人に対する負担がさらに増加することが予想されます。

こうした中、医師が健康に働き続けることのできる環境を整備することは、医師本人にとってはもとより、患者・国民に対して提供される医療の質・安全を確保すると同時に、持続可能な医療提供体制を維持していく上で重要です。

地域医療提供体制の改革や、各職種の専門性を活かして患者により質の高い医療を提供するタスクシフト/シェアの推進と併せて、医療機関における医師の働き方改革に取り組む必要があります。

このような現状と将来の目標のために、今回の改革が行われます。

厚生労働省「医師の働き方改革概要」参照

2.改革ポイント① 時間外労働の上限規制

 時間外労働について、A水準では、年960時間/月100時間未満(例外的につき100時間未満の上限が適用されない場合がある)、B・連携B水準・C水準では、年1,860時間/月100時間未満(例外的に月100時間未満の上限が適用されない場合がある)とする必要があります。なお、この上限時間には副業・兼業先の労働時間も通算します。

厚生労働省「医師の働き方改革概要」引用

 この上限規制には、2019年4月から始まった働き方改革における、「時間外労働と休日労働の合計について月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制」が適用されません。

 また、「時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制」も適用されません。

厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」参照

3.改革ポイント② 面接指導の義務化

 時間外労働が月100時間以上となることが見込まれる医師に対しては面接指導を実施しなければなりません。これは副業・兼業先の医療機関にも義務付けられます。

また、面接指導は月の時間外労働が100時間以上となる前に実施する必要があります。面接指導はABCいずれの水準でも義務化されます。

厚生労働省「長時間労働医師への面接指導とは」参照

4.改革ポイント③ 医師の勤務間インターバルと代償休息確保の義務化

 勤務シフトを作成する際に、勤務間インターバルを次の2つの方法により確保する必要があります。

・始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保

(通常の日勤および宿直許可のある宿日直に従事させる場合)

・始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間を確保

(通常の日勤および宿直許可のある宿日直に従事させる場合)

厚生労働省「医師の勤務間インターバルと代償休息について」引用

5.2024年4月までの手続きについて

 医療機関は時間外労働の上限を1,860時間に設定するためには、B水準・C水準の指定を受けなければなりません。医師労働時間短縮計画を作成し、医療機関勤務環境評価センターによる評価を受ける必要があります。

A・B・Cのどの水準を目指すかを認識し、それぞれ必要な申請を厚生労働省の手続きガイドでご確認ください。

厚生労働省「医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド」参照

(文責:税理士法人FP総合研究所)