【No299】「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について

 厚生労働省は、令和5年9月29日に社会保障審議会医療部会(第102回)を開催し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の施行に向けて審議しました。

 医療機能情報提供制度の刷新(令和6年4月施行)、かかりつけ医機能報告制度の創設等(令和7年4月施行)に向け、令和5年10月以降に新設される検討会、分科会でさらに具体案を取りまとめる予定ですが、今回の医業経営FPNewsでは、当該制度整備の概要についてご案内します。

 1.制度の趣旨

 かかりつけ医機能については、これまで医療機能情報提供制度における国民・患者への情報提供や診療報酬における評価を中心に取り組まれてきました。一方で、医療計画等の医療提供体制に関する取組はこれまで行われていません。

 今後、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の更なる増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中、地域によって大きく異なる人口構造の変化に対応して、「治す医療」から「治し、支える医療」を実現していくためには、これまでの地域医療構想や地域包括ケアの取組に加え、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進める必要があります。

 その際には、国民・患者から見て、一人ひとりが受ける医療サービスの質の向上につながる制度とする必要性があることから、国民・患者が、そのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化し、地域の実情に応じて、各医療機関が機能や専門性に応じて連携しつつ、自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することで、地域において必要なかかりつけ医機能を確保するための制度整備が行われます。

厚生労働省『第102回社会保障審議会医療部会 資料1かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けた検討について』より参照

2.医療機能情報提供制度の刷新(令和6年4月施行)

 制度整備の1つ目は医療機能情報提供制度の刷新です。

 国民・患者が、かかりつけ医機能その他の医療提供施設の機能を十分に理解した上で、自ら適切に医療機関を選択できるよう、「医療機能情報提供制度」の充実・強化を図ります。

 医療機能情報提供制度とは、国民・患者による医療機関の適切な選択を支援するため、医療機関に対し、医療機能に関する情報(診療科目、診療日、診療時間、対応可能な治療内容等)について都道府県知事への報告を義務づけ、それを都道府県知事が公表する制度です。

 見直しのポイントは以下の3点となります。

 ・医療機能情報提供制度について、かかりつけ医機能その他の医療提供施設の機能の理解に基づく、国民・患者の医療機関の適切な選択に資するという制度趣旨を明確化すること。

  ※身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能を「かかりつけ医機能」と定義します。

 ・全国の情報を一元化・標準化した全国統一システムを構築し、より検索性が高くわかりやすい情報を提供すること。

 ・国民・患者へのわかりやすい情報提供ができるよう、情報提供項目を見直すこと(厚生労働省令)。

厚生労働省『第102回社会保障審議会医療部会 資料1かかりつけ医機能が発揮される制度整備の施行に向けた検討について』より引用

3.かかりつけ医機能報告の創設(令和7年4月施行)

 制度整備の2つ目はかかりつけ医機能報告の創設です。

 慢性疾患を有する高齢者その他の継続的な医療を要する者に対するかかりつけ医機能を地域で確保・強化するための仕組みを整備します。

 慢性疾患を有する高齢者等を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、医療機関から都道府県知事に報告を行いますが、報告対象となる医療機関及び報告事項は以下のとおりです。

(1)報告対象となる医療機関

  地域におけるかかりつけ医機能を確保するために必要な病院又は診療所として厚生労働省令で定めるもの(無床診療所を含む。)

(2)報告事項

  かかりつけ医機能のうち、以下の機能の有無及びその内容

  ア 継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能(厚生労働省令で定めるものに限る)

  イ アを有する場合は、①通常の診療時間外の診療、②入退院時の支援、③在宅医療の提供、④介護サービス等と連携した医療提供、⑤その他厚生労働省令で定める機能(①~④は厚生労働省令で定めるものに限る)。なお、連携してイの機能を確保している場合は連携医療機関の名称及びその連携の内容

 次に、都道府県知事は、イの機能を有する報告をした医療機関がその機能の確保に係る体制として厚生労働省令で定める要件に該当するものを有することを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに、厚生労働省令で定めるところにより公表します。

 さらに、都道府県知事は、医療関係者や医療保険者などが参加する外来医療に関する地域の協議の場において、地域でかかりつけ医機能を確保するために必要な具体的方策を検討し、結果を取りまとめて公表します。

厚生労働省『第102回社会保障審議会医療部会 資料1かかりつけ医機能が発揮される制度整備の施行に向けた検討について』より引用

4.患者に対する説明(令和7年4月施行)

 制度整備の3つ目は患者に対する説明についてです。

 かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することについて都道府県知事の確認を受けた医療機関は、慢性疾患を有する高齢者等に在宅医療を提供する場合その他外来医療を提供するに当たって説明が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合であって、患者等から求めがあったときは、正当な理由がある場合を除き、疾患名、治療計画等について適切な説明が行われるよう努めなければなりません。なお、 説明は電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法により行われます。

(1)対象医療機関:かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することについて、都道府県知事の確認を受けた医療機関

(2)対象患者:慢性疾患を有する高齢者等の継続的な医療を要する患者

(3)対象となる場合:在宅医療を提供する場合その他外来医療を提供するに当たって説明が特に必要な場合で、患者やその家族から求めがあったとき

厚生労働省『第102回社会保障審議会医療部会 資料1かかりつけ医機能が発揮される制度整備の施行に向けた検討について』より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)