【No298】訪問診療・訪問看護におけるオンライン資格確認などについて

 令和5年9月29日に厚生労働省の第168回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。今回の医業経営FPNewsでは、本部会で議論されたもののうち、訪問診療や訪問看護におけるオンライン資格確認及び訪問看護ステーションのオンライン請求・オンライン資格確認に関する内容を抜粋してご案内します。

1.訪問診療・訪問看護におけるオンライン資格確認の仕組み

 訪問診療や訪問介護等の外来診療におけるオンライン資格確認は「居宅同意取得型」と呼ばれる仕組みを利用することが、令和4年8月19日に開催された第152回社会保障審議会医療保険部会において示されていました。

 「居宅同意取得型」とは、医療機関等の外部(患者の自宅等)で資格確認や薬剤情報等の提供に関する同意を取得し、医療機関等でオンライン資格確認等システムを利用する仕組みのことであり、第168回社会保障審議会医療保険部会においては、詳細は下記のように説明されています。

 〇初回訪問時のマイナンバーカードによる本人確認に基づく資格情報の取得及び薬剤情報等の提供に関する同意は、医療関係者が持参したモバイル端末等を用いて実施する。

 〇訪問診療等では、医療関係者が患者宅等を訪問することから、患者のなりすましリスクが低いことを踏まえ、2回目以降は、当該医療機関等との継続的な関係のもと訪問診療等が行われている間、医療機関等において再照会機能(※)を活用した資格確認を行うとともに、薬剤情報等については、初回時の同意に基づき取得可能な仕組みとする。

 ※あらかじめ医療機関等において、初回にマイナンバーカードの本人確認により取得した患者の資格情報を用いて、オンライン資格確認等システムに最新の資格情報を照会し、取得する機能。

厚生労働省「第168回社会保障審議会医療保険部会 訪問診療等におけるオンライン資格確認の仕組み案(概要)」より引用

 「当該医療機関等との継続的な関係のもと訪問診療が行われている間」の例示として、「初回から3か月後の末日までの期間に加え、その後は、診療等の継続(毎月診療等が行われていること)をレセプトにより確認すること」が挙げられております。

2.訪問看護ステーションのオンライン請求・オンライン資格確認の義務化

 第168回社会保障審議会医療保険部会においては、訪問看護ステーションにおけるレセプト請求事務や、資格確認業務の負荷軽減を目的として、令和6年秋(保険証廃止時期)を目途として、訪問看護ステーションにオンライン請求・オンライン資格確認を義務化することについて議論されています(期限付きの経過措置あり)。 

 今後のスケジュール(案)は次の図のとおりとなっております。

厚生労働省「第168回社会保障審議会医療保険部会 1. 訪問看護におけるオンライン請求・オンライン資格確認の導入について」より参照・引用

3.オンライン資格確認・オンライン請求に関する助成金

(1)訪問看護ステーションに対する財政支援(医療情報化支援基金) 

 ・事業内容:訪問看護ステーションのオンライン資格確認導入に必要な以下の費用を支援する。

  ①マイナンバーカードの読取・資格確認等のためのモバイル端末等の導入

  ②ネットワーク環境の整備

  ③レセプトコンピュータ、電子カルテシステム等の既存システムの改修

 ・補助内容:基準とする事業額42.9万円を上限に実費補助

  ※オンライン請求の開始に向けて準備が必要な機器等の一部は、オンライン資格確認と兼用することが可能であり、補助対象として盛り込む。

厚生労働省「第168回社会保障審議会医療保険部会 訪問看護ステーションに対する財政支援(医療情報化支援基金)」より引用

(2)訪問診療等における医療機関・薬局に対する財政支援(社会保障・税番号制度システム整備費等補助金)

 ・事業内容:医療機関・薬局における居宅同意取得型の利用に必要な以下の費用を支援する。

  ①マイナンバーカードの読取・資格確認等のためのモバイル端末等の導入

  ②レセプトコンピュータの改修

・補助内容:

 ※事業額上限は、モバイル端末:4.1万円、レセプトコンピュータの改修:78.1万円(病院)/13万円(診療所・薬局)

 ※訪問診療等とオンライン診療等の両方を実施している場合は、この上限額となる。

 ※訪問診療のみを提供する既存の医療機関等については、オンライン資格確認のシステム本体の導入補助(ICT基金)を活用した上で、居宅同意取得型の本導入補助を受けることとなる。

厚生労働省「第168回社会保障審議会医療保険部会 訪問診療等における医療機関・薬局に対する財政支援(社会保障・税番号制度システム整備費等補助金)」より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)