【No294】助産に関する消費税の非課税措置について
出産一時金の金額が改正され、令和5年4月1日以降の出産の場合には原則として従来の420,000円から500,000円に増額されております。新聞報道などによりますと、出産一時金の増額に合わせて分娩費用の増額を行った医療機関も多いようです。今回の医業経営FPNewsでは、助産に係る資産の譲渡等に係る消費税の非課税措置について、改めてご説明致します。
1.消費税が非課税となる取引
消費税が非課税となる取引として①社会保険医療の給付等、②介護保険サービスの提供等、③助産などが挙げられております。これらは、基本的に消費税法における資産の譲渡等に該当するため課税の対象となるものですが、社会政策的配慮などから課税の対象から除かれ、消費税が課税されない非課税取引として定められております。
2.助産に係る資産の譲渡等に係る消費税の非課税措置
助産に係る資産の譲渡等として消費税が非課税となるものは以下のとおりになります。なお、文書料は分娩に関するものであっても課税となります。
(1)助産に係る資産の譲渡等の範囲
消費税法別表第一第八号に以下のとおり定められております。なお、正常分娩及び異常分娩(自然流産、早産、死産を含みます。)のいずれかを問いません。
【消費税法別表第一第八号】
医師、助産師その他医療に関する施設の開設者による助産に係る資産の譲渡等(第六号並びに前号イ及びロの規定に該当するものを除く。) |
e-Gov法令検索「消費税法」より引用
具体的には以下のとおりになります。
(ア)妊娠しているか否かの検査
検査の結果、妊娠していないと判明した場合も含めて非課税となります。
(イ)妊娠していることが判明した時以降の検診、入院
妊娠していることが判明した時以降の検診、往診についても非課税となります。また、入院生活を営む上で必要とされる①入院費用として徴収する室料、②看護料、③食事代、④寝具料、⑤洗濯代、⑥電気代、⑦お産パッド代、⑧保健指導料、⑨薬剤料なども非課税となります。
(ウ)分娩の介助
分娩介助料、薬剤料などは非課税となります。
(エ)出産の日以後二か月以内に行われる母体の回復検診
回復検診は、回数を問わず非課税となります。
(オ)新生児に係る検診及び入院
入院生活を営む上で必要とされる①新生児入院費用として徴収する新生児室料、②新生児看護料、③ミルク代、④おむつ代などについては非課税となります。
(2)入院費用の取扱い
妊娠中及び出産後の入院については、次のとおりになります。
(ア)妊娠中の入院については、産婦人科医が必要と認めた入院(妊娠中毒症、切迫流産等)及び他の疾病(骨折等)による入院のうち産婦人科医が共同して管理する間の入院は助産に係る資産の譲渡等に該当します。よって、助産に係る資産の譲渡等として非課税となります。
(イ)出産後の入院のうち、産婦人科医が必要と認めた入院及び他の疾病による入院のうち産婦人科医が共同して管理する間については、出産の日から一月を限度として助産に係る資産の譲渡等に該当します。よって、助産に係る資産の譲渡等として非課税となります。
(ウ)新生児については、(イ)の取扱いに準じます。
(3)差額ベッド料等の取扱い
助産に係る資産の譲渡等については、一定の金額を超える場合であっても非課税となります。そのため、(2)に記載しております妊娠中の入院及び出産後の入院における差額ベッド料及び特別給食費並びに大学病院等の初診料についても非課税となります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)