【No285】アートメイクの医師法上の取扱いについて

 厚生労働省は令和5年7月3日に「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」を各都道府県に通知しています。この通知により、改めてアートメイクが医行為に該当するかどうかが示されましたので、ご紹介致します。なお、上記の他、平成12年6月9日「医師法上の疑義について」厚生省健康政策局医事課長通知平成13年11月8日「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」厚生労働省医政局医事課長通知でも同様の通知がされています。

1.アートメイクとは

 アートメイクとは、皮膚の表面に色素を付けた針先で墨等を入れ、眉毛やアイライン、唇などを描く行為のことをいいます。刺青との違いは、アートメイクは表皮に色素を入れていくため、時間の経過とともに色が薄くなっていく点が挙げられます。

2.医師法第17条の解釈

 令和5年6月28日に福島県保健福祉部長が厚生労働省に対し医師法第17条の解釈について照会を行っています。その照会の内容は、医師免許を有しない者がアートメイクを業として行った場合、医師法第17条違反と解されるかどうかになります。

【医師法第十七条】

医師でなければ、医業をなしてはならない。

e-Gov法令検索「医師法」より引用

【医師法第17条の解釈】

医師法第17条に規定する「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為「医行為」)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。

厚生労働省『「医行為」について』より引用

 今回の厚生労働省の通知において、「御照会の行為は、医行為に該当し、医師免許を有さない者がこれを業として行うのであれば、医師法第17条に違反するものと思料する。」としています。

厚生労働省「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」P.3より引用

 また、令和2年9月16日最高裁判所決定(平成30年(あ)1790号医師法違反被告事件)において、タトゥー施術行為は医行為ではないと判示されています。しかしながら、今回の照会の行為は、医師・看護師等が実施している実態があるため、医行為に該当することが改めて示されています。

3.看護師によるアートメイクの施術

 看護師は、保健師助産師看護師法第37条により医師又は歯科医師の指示の下で行う場合にはアートメイクの施術が可能であると解されます。

【保健師助産師看護師法第37条】

保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)