【No258】後期高齢者の窓口負担割合の変更等
医療保険制度における給付と負担の見直しを実施するとともに、子ども・子育て支援の拡充や、予防・健康づくりの強化等を通じて、全ての世代が公平に支え合う「全世代対応型の社会保障制度」を構築することを目的として、令和3年の通常国会において、健康保険法等の一部を改正する法律が成立しました。
その中で「医業経営FPNews【No.192】後期高齢者の窓口負担割合の見直しについて」でもご案内しました後期高齢者の窓口割合の変更等が令和4年10月1日より施行されました。今回は、その施行内容についてご紹介します。
1.後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直しについて
令和4年10月1日から、75歳以上の方等で一定以上の所得がある方は、医療費の窓口負担割合が変わります。変更後のそれぞれの年齢層における窓口負担割合は以下のとおりです。
・ 75歳以上の者は、1割(現役並み所得者は3割、現役並み所得者以外の一定所得以上の者は2割)。←変更点
・ 70歳から74歳までの者は、2割(現役並み所得者は3割)。
・ 70歳未満の者は3割。6歳(義務教育就学前)未満の者は2割。
厚生労働省「医療費の自己負担割合について」より引用
2.現役並み所得者以外の一定所得以上の者とは
現役並み所得者以外の一定所得以上の者とは、75歳以上の方等(※1)の課税所得(※2)が28万円以上かつ「年金収入(※3)+その他の合計所得金額(※4)」が単身世帯の場合は200万円以上、複数世帯の場合は合計320万円以上の方が対象となります。なお、現役並み所得者は、令和4年10月1日以降も引き続き3割です。
具体的な判定の流れは以下の通りです。
※1 65~74歳で一定の障害の状態にあると広域連合から認定を受けた方を含みます。
※2 課税所得とは、住民税納税通知書の課税標準の額です。課税標準の額は、前年の収入から、給与所得控除や公的年金等控除等、所得控除(基礎控除や社会保険料控除等)等を差し引いた後の金額です。
※3 年金収入には遺族年金や障害年金は含みません。
※4 その他の合計所得金額とは、事業収入や給与収入等から、必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額のことです。
※5 課税所得145万円以上で、医療費の窓口負担割合が3割の方。
(一定の基準・要件を満たす場合、窓口負担割合が1割または2割になるケースがあります)
厚生労働省「後期高齢者医療制度の見直しについて」より引用
3.高額療養費負担限度額
高額療養費制度とは、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払っていただいた後、月ごとの自己負担限度額を超える部分について、事後的に保険者から償還払い(※1)(※2)される制度です。
自己負担限度額は、被保険者の所得に応じて設定されており、以下の表の通りです。
※1 入院の場合、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる現物給付化の仕組みを導入。
※2 外来でも、平成24年4月から、同一医療機関で自己負担限度額を超える場合に現物給付化を導入。
※3 負担増加額3,000円以内となる配慮措置については下記「4.負担増加額に対する配慮措置」を参照下さい。
※4 多数回該当とは過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がることをいいます。
厚生労働省「医療費の自己負担割合について」より一部引用
4.負担増加額に対する配慮措置
令和4年10月1日から令和7年9月30日までの間は、2割負担対象者について、1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担増加額を3,000円までに抑えます。ただし、入院の医療費は対象外です。
同一の医療機関での受診については、上限額以上窓口で支払う必要はありません。そうでない場合では、1か月の負担増を3,000円までに抑えるための差額が後日高額療養費として払い戻されます。
配慮措置の適用で払い戻しとなる方は、高額療養費として事前に登録されている口座へ後日自動的に払い戻しされます。2割負担対象者で高額療養費の口座が登録されていない方には、後期高齢者医療広域連合または市区町村から申請書が郵送されます。
厚生労働省「後期高齢者医療制度の見直しについて」より一部引用
5.さいごに
令和4年度以降、団塊の世代が75歳以上となり始め、医療費の増大が見込まれています。
後期高齢者の医療費のうち、窓口負担を除いて約4割は現役世代の負担(支援金)となっており、今後も拡大していく見通しとなっております。
全国の後期高齢者医療の被保険者の内、約20%が今回の改正で窓口負担割合が2割になる方に該当します。被保険者証の「有効期限」を必ず確認し、令和4年10月1日以降は、新たに交付された被保険者証をご利用下さい。
(文責:税理士法人FP総合研究所)