【No249】電子処方箋の運用に向けて

 電子処方箋の運用開始に向けて、令和4年10月より電子処方箋の利用申請が開始される運びとなりました。「医業経営FP News №222】「電子処方箋」について」におきまして、電子処方箋の導入意義等を詳しくご案内しておりますので、今回は電子処方箋の運用に向けてご留意いただきたい点について説明します。

1.利用開始に向けたスケジュール

 電子処方箋は令和5年1月より運用が開始される予定となっており、令和4年度から対応が必要なHPKIカード(※1)の発行申請等の準備作業の内容や作業スケジュールについては、医療機関等ポータルサイト等にて順次公開されています。なお、利用にあたっては原則義務化とされているオンライン資格確認(※2)を導入している必要があるため、まだ導入されていない場合は、早めの導入準備を検討することが必要です。

医療機関向けポータルサイト「電子処方箋概要案内【病院・診療所】」より引用

※1 HPKIとは、保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称です。電子処方箋管理サービスの利用には「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に則った形で医師・歯科医師が電子的に署名を行う必要がありますが、令和5年1月時点では、HPKI カードを用いた署名方式がそれに準拠するため、取得手続が必要となります。

 取得手続きについては、日本医師会電子認証センターの医師資格証(HPKIカード)新規お申込みをご確認ください。

※2 オンライン資格確認を利用開始するための手続きは「オンライン資格確認の導入に向けた準備作業手引き」をご確認ください。

 また、オンライン資格確認については、過去の医業経営FPNewsにてご案内しておりますのでそちらもあわせてご覧ください。(№157№166№174№182№195及び№235

2.電子処方箋を導入した場合のメリット及び紙の処方箋との実務上の違い

 ⑴電子処方箋を導入した場合のメリット

 電子処方箋管理サービスを導入することで、重複投薬・併用禁忌のチェックを行うことができ、重複投薬・併 用禁忌の薬剤の処方の防止が可能となります。そのうえ、診療・服薬指導時には、処方・調剤情報を閲覧することができるようになるため、処方・調剤情報を踏まえた診療・服薬指導が可能になります。さらに、処方・調剤情報は、レセプト由来の薬剤情報と異なり、医師等、薬剤師が電子処方箋管理サービスに登録した処方情報、調剤した薬剤の情報を基にしており、登録の都度データとして反映されるため、より最新の情報に基づいた診療・服薬指導が可能です。また、電子的な処方箋の運用により薬剤師との情報共有が効果的に行えます。

 
医療機関等向けポータルサイト「病院・診療所向け オンライン資格確認等システム 運用マニュアル」参照

 ⑵紙の処方箋との実務上の違い

 以下、患者が電子処方箋を希望した場合の対応フローです。

医療機関等向けポータルサイト「病院・診療所向け オンライン資格確認等システム 運用マニュアル」より引用

 対応フローについては、通常の紙の処方箋を希望された場合と比較すると下記のような実務上の違いがあります。

※1 以下の①~⑥に該当する場合は、電子処方箋管理サービスへの処方箋情報の登録ができないため、電子処方箋に対応していない紙の処方箋を発行する必要があります。

  ①院内処方の場合

  ②リフィル処方、医師の判断による分割調剤の場合

  ③オンライン資格確認で有効な資格を確認できない患者に処方箋を発行する場合

  ④医療保険適用外の医薬品を処方する場合

  ⑤医療保険適用外の診療時に処方箋を発行する場合

  ⑥解消に時間を要するエラーなどにより、電子処方箋管理サービスに登録できない場合

※2 引換番号とは、病院・診療所が電子処方箋管理サービスに処方箋情報のファイルを登録した場合に、患者が薬局に処方内容を伝えるために使用する番号です。患者は、マイナンバーカードによる受付のほかに被保険者番号と引換番号を薬局に伝えることで、薬局は処方箋情報を確認することができます。

※3 電子処方箋を選択し紙の処方箋が発行されない状況においても患者が処方内容を確認できるよう処方箋の情報が印刷された紙です。引換番号も印字されています。ただし、処方箋の原本ではないのでご注意ください。

医療機関等向けポータルサイト「病院・診療所向け オンライン資格確認等システム 運用マニュアル

39~40ページより引用

医療機関等向けポータルサイト「病院・診療所向け オンライン資格確認・電子処方箋クイックガイド」より引用

3.医療機関・薬局が電子処方箋管理サービスを導入する場合の補助について

 オンライン資格確認と同じく、電子処方箋管理サービスを導入する場合もシステム改修費用が補助金の対象となります。

 補助金の申請開始は令和5年2月以降の予定となっております。また、補助金申請の前提となる条件や具体的な手続き等が決定次第医療機関等向けポータルサイトにて公開されますので、随時情報をご確認いただき、申請手続きをお忘れにならないようにご注意ください。

 なお、現在発表されております補助金の内容については以下のとおりです。

医療機関等向けポータルサイト「医療機関・薬局が電子処方箋管理サービスを導入する場合の補助についてより引用

4.最後に

 令和5年4月からオンライン資格確認導入が原則として義務付けられます。また、オンライン資格確認の補助金は令和5年3月31日まで補助対象事業を完了させ、令和5年6月30日までに申請する必要があります。そのため、令和4年度末にかけてシステム事業者の対応が通常よりも時間が掛かる可能性があります。オンライン資格確認、電子処方箋いずれの導入についても、お考えの方はご注意ください。

 また、厚生労働省主催の電子処方箋に関する説明会が令和4年10月17日にオンラインにて開催されます。参加にあたっての事前登録は一切不要ということですので、詳細を開催案内にてご確認ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)