【No244】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大

 令和2年5月29日に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、令和4年10月から短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用が拡大されます。現行の制度との変更点は以下のとおりです。

1.現行の短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用

 平成28年10月から、特定適用事業所(※1)で働くパート・アルバイト等の短時間労働者が、一定の要件(※2)を満たすことで、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

また、特定適用事業所でなくても労使合意を得ることで、任意特定適用事業所(※3)になるための申請ができます。

(※1)特定適用事業所とは

 事業主が同一(※)である一または二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所

 (※)「事業主が同一」である適用事業所とは

 ・法人事業所(株式会社、社団・財団法人、独立行政法人等)で、法人番号が同一の適用事業所

  →医療法人などで複数の施設を所有している法人は、医療法人全体での判定となります。

 ・個人事業所(人格なき社団等を含む)で、現在の適用事業所

(※2)短時間労働者が被保険者となる一定の要件とは

 ・1週の所定労働時間が20時間以上であること

 ・雇用期間が1年以上見込まれること

 ・賃金の月額が88,000円以上であること(※)

 (※)月額賃金 88,000円の算定対象は、基本給及び諸手当で判断します。ただし、以下の(1)から(4)までの賃金は算入されません。

  (1)臨時に支払われる賃金(結婚手当等)

  (2)1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

  (3)時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して 支払われる賃金(割増賃金等)

  (4)最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

 ・学生でないこと

(※3)任意特定適用事業所とは

 国または地方公共団体に属する事業所および特定適用事業所以外の適用事業所で、労使合意に基づき、短時間労働者を健康保険・厚生年金保険の適用対象とする申出をした適用事業所

2.令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大

 法律改正に伴い短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用が更に拡大されます。現行の制度との変更点は以下のとおりです。

(1)令和4年10月からの改正

・「特定適用事業所」の要件
 (変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
 (変更)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所

・「短時間労働者」の適用要件
 (変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
 (変更)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)

(2)令和6年10月からの改正

・「特定適用事業所」の要件
 (変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
 (変更)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所

(3)要件早見表

日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)