【No235】オンライン資格確認システムの導入状況と今後の見通しについて

 令和4年度診療報酬改定によりオンライン資格確認システムを使って患者の薬剤情報や特定健診情報等を取得し、その情報を活用して診療等を実施することに対する評価として「電子的保健医療情報活用加算」を請求できるようになりました。

 また、令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」においてもオンライン資格確認システムの導入義務化やマイナンバーカードの保険証利用促進に関して言及されていることから、オンライン資格確認システムの現在の導入状況と今後の見通しについてご説明します。

1.制度概要と導入状況

 オンライン資格確認の制度概要や現在までの経緯については過去にも複数回医業経営FPNewsにおいて取り上げておりますのでそちらもあわせてご参照ください。(№157№166№174№182及び№195

 令和4年6月12日時点でのオンライン資格システムの導入状況は以下の表のとおりになります。

 オンライン資格確認システムで使用する顔認証付きカードリーダーの申込数が全施設の6割弱に留まっており、電子カルテの設定が完了し、実際に運用を開始している施設数は全施設の2割強となっています。

 また、各統計の内訳に着目すると病院や薬局では比較的導入が進んでおり、一方、医科診療所・歯科診療所は消極的な状況であることが確認できます。

厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」より

2.オンライン資格確認システムを通じた患者情報等の活用に係る評価の新設

(1)基本的な考え方

 令和4年度診療報酬改定において、オンライン資格確認システムの活用により、診断及び治療等の質の向上を図る観点から、外来において、オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することに対する評価が親切されました。

(2)具体的な内容

 オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することに係る評価を新設する。

  初診料   電子的保健医療情報活用加算 7点

  再診料   電子的保健医療情報活用加算 4点

  外来診療料 電子的保健医療情報活用加算 4点

 [対象患者]

  オンライン資格確認システムを活用する保険医療機関を受診した患者

 [算定要件]

  別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して、健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認により、当該患者に係る診療情報等を取得した上で診療を行った場合は、電子的保健医療情報活用加算として、月1回に限りそれぞれ所定点数に加算する。

 (※)初診の場合であって、健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認により、当該患者に係る診療情報等の取得が困難な場合又は他の保険医療機関から当該患者に係る診療情報等の提供を受けた場合等にあっては、令和6年3月 31 日までの間に限り、3点を所定点数に加算する。

 [施設基準]

  ①療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和 51 年厚生省令第 36 号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っていること。

  ②健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認を行う体制を有していること。

  ③電子資格確認に関する事項について、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。

(厚生労働省 中医協 総-1 4.2.9「個別改定項目について」参照)

3.「経済財政運営と改革の基本方針2022」(以下「骨太の方針2022」といいます)において示された今後の方針

 「経済財政運営と改革の基本方針2022において、次の2点について明示されています。

 (1)保険医療機関・薬局に、2023 年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す。

  令和4年度診療報酬改定において新設された診療報酬上の加算の取扱いは引き続き中央社会保険医療協議会において検討される予定となっています。

 (2)2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2022 P33」より

 上記のとおり、オンライン資格確認システムの導入状況を鑑みて、「骨太の方針2022」において具体的に期限を設けた方針が示されることになりました。これに伴って今後もオンライン資格確認システムに関連した診療報酬改定や新たな補助金等が設定される可能性もありますので、引き続き続報がありましたら医業経営FPNews内においてお伝えさせていただきます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)