【No234】在職老齢年金制度の見直しと年金の支給停止について

 令和4年3月以前の65歳未満の方の在職老齢年金制度は、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「28万円」を超えない場合は年金額の支給停止は行われず、「28万円」を上回る場合は年金額の全部または一部について支給停止されていました。この在職老齢年金制度が見直され、令和4年4月以降は65歳以上の方と同じように、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「47万円」を超えない場合は年金額の支給停止は行われず、「47万円」を上回る場合は年金額の全部または一部について支給停止される計算方法に緩和されました。

 近年、シニア世代の従業員も増加しており、在職中のまま老齢厚生年金の受給資格を得る人も増えてくることが予想されます。また、在職中のまま老齢厚生年金の受給資格を得る法人医療機関の役員においても同様のことが考えれらます。そこで、今回は上記の支給停止制度を踏まえて年金と賃金の関係についてご案内します。

1.概要

 老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)に応じて年金額が支給停止となる場合があります。

 なお、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に常勤並み(※3)に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます。

 また、65歳未満の方の令和4年3月以前の年金については、支給停止の計算方法が異なります。

※1 基本月額

 加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額

※2 総報酬月額相当額

 (その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

 上記の「標準報酬月額」、「標準賞与額」は、70歳以上の方の場合には、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」、「標準賞与額に相当する額」となります。

※3 1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常勤雇用者の4分の3以上の勤務を指します。

2.年金支給月額の計算式

(1)在職老齢年金による調整後の年金支給月額

 ①基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合

  全額支給

 ②基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合

  基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

(2)令和4年3月以前の65歳未満の方の在職老齢年金による年金支給月額の計算式

 ①基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合

  全額支給

 ②総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合
  基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

 ③総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合
  基本月額-総報酬月額相当額÷2

 ④総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合
  基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

 ⑤総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合
  基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

3.支給停止期間や支給停止額の変更時期

(1)支給停止期間

 基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えている期間

(2)支給停止額の変更時期

 総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月※

 ※退職して1か月以内に再就職し、厚生年金保険に加入した場合を除く

厚生労働省 在職老齢年金の計算方法より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)