【No233】医療機関が実施するスタッフの慰安旅行の費用について
新型コロナウイルス感染症の第七波が警戒される中、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたらスタッフの慰安旅行を実施したいと考えておられるドクターもいらっしゃることと思います。今回の医業経営FPNewsでは、スタッフの慰安旅行の費用の税務上の取扱いをご説明します。
1.スタッフの慰安旅行の費用の経費性
個人又は法人がその従業員に対し、社会通念上、一般に行われていると認められる慰安旅行の費用を負担した場合に、その従業員が受ける経済的利益については、原則として、給与所得に該当せず福利厚生費として取り扱うことが可能です。租税法上の少額不追及の趣旨に反しないものと考えられるため、その経済的利益につき給与所得として課税されないことになります。
なお、福利厚生費として取り扱うためには、以下の要件があります。
(1) その旅行に要する期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数によります。
(2) その旅行に参加する従業員の数が全従業員の数の50%以上であること。
複数の医療機関を有する医療法人が医療機関ごとに旅行を行う場合には、それぞれの医療機関ごとの人数の50%以上が参加する必要があります。
上記の要件を満たしている場合であっても、豪華旅行(目安として使用者が負担する旅行費用が10万円超となるもの)については、経費として認められません。
また、不参加者に対し金銭を支給する場合には、全ての従業員に対しその支給額に相当する給与の支払があったものとして、所得税が課税されます。
2.事業主又は役員の費用
事業主又は役員の旅行費用については、従業員の引率等のために必要であると認められる場合には必要経費又は損金に算入することが認められます。
3.消費税
消費税は、国内において行われた取引が課税の対象となります。そのため、役務の提供が国内である国内旅行は課税の対象となり、課税仕入れとなります。一方で、海外でのホテル代や食事代は役務の提供が国外で行われるため、消費税は課税の対象外となります。
また、国内から国外への飛行機代は消費税が免税となります。ただし、予約の取り消しなどの事務手数料は役務の提供が国内の場合、課税の対象となり課税仕入れとなります。
4.必要経費又は損金の算入時期
慰安旅行費は、短期前払費用の特例の適用は認められません。そのため、その支払時期によらず、その旅行を行った時期に必要経費又は損金に算入することになります。
5.具体例
以下の事例の場合、それぞれの取扱いをご説明します。
<事例1>
イ 旅行期間3泊4日
ロ 費用および負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担8万円)
ハ 参加割合100パーセント
旅行期間・参加割合の要件および少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよいものと考えられます。
<事例2>
イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用および負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
ハ 参加割合80パーセント
旅行期間・参加割合の要件および少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよいものと考えられます。
<事例3>
イ 旅行期間6泊7日
ロ 費用および負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円)
ハ 参加割合50パーセント
旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税されるものと考えられます。
(文責:税理士法人FP総合研究所)