【No230】「確定拠出年金制度の改正」について
令和4年4月の年金制度改正により受給開始時期の上限が75歳に延長され、確定拠出年金における老齢給付金の受給開始時期を60歳から75歳に達するまでの間で選択できるようになりました。令和4年5月よりiDeCo(個人型確定拠出年金)及び企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入できる年齢の要件が拡大されましたので、主な確定拠出年金制度の改正についてご案内致します。
1.令和4年5月からの加入可能年齢の拡大
(1)企業型DC
これまで、企業型DCに加入することができるのは65歳未満の方のみでしたが、令和4年5月から70歳未満の方まで拡大されます。ただし、企業によって加入できる年齢などが異なります。
厚生労働省 制度改正に関するチラシ(企業型DC加入者・事業主向け)より引用
(2)iDeCo
これまでiDeCoに加入することができるのは60歳未満の方のみでしたが、令和4年5月から65歳未満の方まで拡大されます。
厚生労働省 2020年の制度改正 企業型DC・iDeCoの加入可能年齢の拡大部分より引用
※ 確定拠出年金(DC)制度とは、基礎年金や厚生年金などの公的年金制度に上乗せして、拠出された掛金とその運用収益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。掛金を事業主が拠出する企業型DCと、加入者自身が拠出する個人型DC(iDeCo)があります。
2.令和4年10月から企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和
これまで企業型DC加入者がiDeCoに加入するには、iDeCoの加入を認める企業型DCの規約の定めが必要でした。令和4年10月からは、企業型DCの規約の定めを不要とし、iDeCoに加入できなかった企業型DC加入者の方もiDeCoに加入できるようになります。
ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金、これらの合計額がそれぞれ以下の表のとおりであることが必要です。また、企業型DCにおいて加入者掛金を拠出(マッチング拠出)している場合などには、iDeCoに加入できません。
厚生労働省 2020年の制度改正 企業型DC加入者のiDeCo加入要件緩和部分より引用
厚生労働省 制度改正に関するチラシ(企業型DC加入者・事業主向け)より引用
3.令和6年12月からiDeCo加入時等の事業主証明書の廃止等
企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合算管理の仕組みに確定給付企業年金等の他制度掛金相当額を併せて管理することにより、iDeCoの実施主体である国民年金基金連合会は、毎月、企業年金の加入状況を確認できることになります。これに伴い令和6年12月から、現在事業主が行う従業員のiDeCo加入時・転職時における企業年金の加入状況に関する事業主証明書の発行や年1回の現況確認を廃止します。
厚生労働省 2020年の制度改正 企業型DC、iDeCoの拠出限度額にDB等の他制度ごとの掛金相当額を反映部分より引用
4.最後に
定年年齢引上げ等の就労の拡大等、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、現行制度が見直されています。
改正により利用の選択肢が広がり、企業型・個人型ともに大きな転機になることが予想されますので、制度の内容を十分に認識し、企業型DC及びiDeCoを見直すよい機会ではないでしょうか。
(文責:税理士法人FP総合研究所)