【No228】雇用保険料率の改定について
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が令和4年3月30日に国会で成立しました。長引く新型コロナウイルス感染症への対策として政府が雇用維持に協力した企業に支払う雇用調整助成金の支給が急増したことやいわゆるコロナ倒産による失業給付の増加によって雇用保険の財源が枯渇していたことから、労働者と事業主に負担増を求めることになりました。
令和4年4月以降の雇用保険料率が改定されていますので、以下においてご説明します。
1.令和4年度雇用保険料率(赤字は変更部分になります)
令和4年4月1日よりまず事業主の負担のうち雇用保険二事業の保険料率が変更となり、その後令和4年10月1日より労働者負担と事業主負担のうち失業等給付・育児休業給付の保険料率が改定される2段階改定となっています。
なお、医療機関は下記の表のうち一般の事業の保険料率が適用されることになります。
2.令和4年度労働保険の年度更新に対する影響について
①労働保険の年度更新とは
労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを「保険年度」といいます。)を単位として計算されることになっており、その額はすべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定することになっています。
労働保険では、保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあとに精算するという方法をとっています。
したがって、事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続が必要となります。これが「年度更新」の手続です。
(厚生労働省「労働保険の年度更新とは」より引用)
②令和4年度の年度更新において注意すべき点
令和4年度の年度更新では、新年度に該当する令和4年4月1日から令和5年3月31日までの保険年度中に雇用保険料率に変更があることから、従来の集計・計算方法とは異なり、令和4月1日から令和4年9月30日までの期間と令和4年10月1日から令和5年3月31日までのふたつの期間に分けて集計し、それぞれの期間の雇用保険料率を乗じて概算保険料を算定する必要があります。
(雇用保険被保険者数お知らせはがき(令和4年3月送付分)に関するFAQ Q17を参照)
また、同様の理由から令和5年度の年度更新において確定保険料の算定をする際にも同じくふたつの期間に分けて集計をおこない確定保険料を算定することになります。
なお、集計の際にどの保険料率を適用する期間に該当するのかは、賃金等の締め日がどの期間に属していたかにより判定することになります。
例えば、毎月の賃金等が毎月15日締め同月25日払いの事業所においては、令和4年3月16日から同年4月15日までの期間から令和4年8月16日から同9月15日までの期間の分の賃金等の合計額に上記表1の保険料率を乗じて算定し、令和4年9月16日から令和5年3月15日までの期間の分の賃金等の合計額に上記表2の保険料率を乗じて算定することになります。
詳細については、後日労働基準監督署から事業所宛てに郵送される「令和4年度労働保険 年度更新 申告書の書き方」や厚生労働省ホームページ等をご参照ください。
3.給与計算の際の影響について
令和4年10月1日より労働者負担分の雇用保険料率が改定されることになります。こちらも上記2.と同様に賃金等の締め日によって計算の際に使用する保険料率を判定することになりますので、令和4年10月1日以降に締め日の到来した賃金等については、一般事業者の場合従来の1,000分の3ではなく、改定後の1,000分の5で労働者負担分の雇用保険料を算定することになります。
例えば、毎月15日締め同月25日払いの事業所においては、令和4年10月25日支払いの賃金等から新しい雇用保険料率で算定することとなり、この期間において令和4年9月30日までの期間と令和4年10月1日以降の期間が含まれていますが、すべて令和4年10月1日改定の雇用保険料率で計算することになりますので、注意が必要となります。
(文責:税理士法人FP総合研究所)