【No225】パワーハラスメント防止措置の中小事業主への義務化について
2020年6月1日に改正された労働施策総合推進法(以下 パワーハラスメント防止措置)が2022年4月1日より中小事業主※にも適用され、職場でのパワーハラスメントに対処することが義務化されます。そこで医療機関の院長や管理者が気を付けるべきポイントをご説明します。
※中小事業主とは
1.職場における「パワーハラスメント」とは
職場において行われる、
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの
であり、①〜③までの要素を全て満たされるものをいいます。
※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
(1)優越的な関係を背景とした言動とは
当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対し抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものとされます。
(例)
・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの 等
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものとされます。
(3)労働者の就業環境が害されるとは
・当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。
・この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当であるとされます。
2.パワーハラスメントに該当すると考えられる例/しないと考えられる例
職場におけるパワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な類型として以下の6つの類型があり、類型ごとに典型的にパワーハラスメントに該当し、又はしないと考えられる例として以下のようなものがあります。
※これらについては限定列挙ではありません。また、個別の事案の状況について判断が異なる場合もありえます。
3.事業主が講ずべき措置
事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません。(義務)
・事業主の方針等の明確化及びその周知・徹底
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・徹底をすること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文章に規定し、労働者に周知・啓発すること
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適正な対応
⑤事実確認を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに相談者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦事実関係確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
注1 事実確認ができた場合 注2 事実確認ができなかった場合も同様
・そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
注3 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む。
⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
4.パワーハラスメント防止措置の罰則
今回の改正によるパワーハラスメント防止措置の罰則はありません。
(文責:税理士法人FP総合研究所)