【No220】「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の収入確認の特例」の延長について
新型コロナウイルスワクチンの追加接種(3回目接種)が医療機関における個別接種、市区町村による集団接種及び自衛隊による大規模接種によってそれぞれ並行して実施されています。
現在予定されている追加接種の期間は令和3年12月1日から令和4年9月30日までとなっており、それに伴ってワクチン接種業務に従事する医療従事者を確保する観点から、厚生労働省が令和3年6月4日に発出した「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の 被扶養者の収入確認の特例について 」において通知されていた特例的な取り扱いが延長されることになりましたので、その内容についてご説明します。
1.新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の 被扶養者の収入確認の特例
(1)趣旨
各保険者は、健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者(以下、「被扶養者」といいます。)の認定及び資格確認の際に、被扶養者の収入を確認するに当たっては、被扶養者の過去の収入、現時点の収入又は将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込むものとしています。
新型コロナウイルスワクチンの接種業務は、例年にない対応として、期間限定的に行われるものであり、また、特にワクチン接種業務に従事する医療職の確保が喫緊の課題となっているという特別の事情を踏まえ、特例措置として医療職の方がワクチン接種業務に従事したことにより得た給与収入は、収入確認の際、年間収入に算定しないこととされました。
(2)対象となる者
ワクチン接種業務に従事する医療職の方(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士及び救命救急士)
(3)対象となる収入
令和3年4月から令和4年9月末までのワクチン接種業務に対する給与収入
(厚生労働省「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の被扶養者の収入確認の特例の延長について」より」
(4)手続の方法
ワクチン接種業務を行う事業主・雇用主(市区町村、医療機関等)から「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事した際の収入に係る申立書」の発行を受け、被扶養者の認定及び資格確認の際に、加入する保険者に提出しておこないます。(厚生労働省【様式】「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事した際の収入に関する申立書」Wordファイル)
2.特例の対象とならない方(医療事務職に従事している方等)について
本特例はワクチン接種業務に従事する医療職の方が対象となっているため、医療機関等で医療事務職等に従事されている方がワクチン接種業務に従事したことにより得た給与収入については対象外となります。
しかし、厚生労働省は本特例の発出より以前に上記医療職の方に限定しない形で、新型コロナウイルス感染症への対応として、一時的に収入が増加する被扶養者については、十分に留意して取り扱うよう各健康保険組合に対して通知しています。
これによると、特例の対象とならない方についても直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、総合的に将来収入の見込みを判断する等の考え方が示されていますので、ワクチン接種業務に従事することによって収入の増加が見込まれる医療職以外の方の扶養者に該当する方はこの点を踏まえて加入されている健康保険組合にご確認ください。
(厚生労働省「令和2年4月10日付け事務連絡」及び「令和3年2月12日付け事務連絡」より)
3.本特例に関する注意点
本特例の対象となる方やその扶養者の方において誤った認識をされていることが散見されますので、注意点をあげておきます。
(1)本特例はあくまでも被扶養者の認定及び資格確認の際に医療職の方がワクチン接種業務に従事したことにより得た給与収入は、収入確認の際、年間収入に算定しないことを意図しています。本特例の対象となる給与収入についても、所得税法上は例外的取り扱いはなく給与所得として課税の対象となります。
(2)扶養者の勤務する会社等が就業規則・給与規程等において一定の収入に満たない配偶者や家族を従業員が扶養している場合に、扶養手当等の名目で一定の金銭を支給することを定めている場合があります。
このような扶養手当等は各会社等が独自に定めている規程に基づいて支給されるものであるため、本特定の取り扱いの対象外となります。
したがって、ワクチン接種業務に従事することにより一時的に収入が増加することで、上記のような扶養手当等の支給対象から外れてしまう可能性があるため、本特例の対象となる被扶養者のうち、扶養者が勤務する会社等から従前より「扶養手当」等の支給を受けている方については、念のためご自身で就業 規則・給与規程等をご確認ください。
(文責:税理士法人FP総合研究所)