【No204】自宅・宿泊療養を行っている者に対する診療報酬の加算について
新型コロナウイルス感染症の新規感染患者が急拡大している影響で、東京圏を中心に医療供給体制は逼迫しており、政府はこの状況に対応するため感染急増地域は自宅・宿泊療養を基本とする方針を示しました。
これに沿って厚生労働省は、自宅・宿泊療養中のコロナ患者に対して行う往診や訪問看護、オンライン診療について一定の要件を満たした場合には、通常の診療報酬に加算して算定できる特例措置を発表しましたので、以下においてご説明させていただきます。
1.自宅・宿泊療養中のコロナ患者が状態悪化して往診等を行った場合
厚生労働省は7月30日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その51)」において、宿泊施設又は当該者の居宅若しくはこれに相当する場所から外出しないことを求められている者(「以下「自宅・宿泊療養を行っている者」という。)に対し、
① 当該者又はその看護に当たっている者から新型コロナウイルス感染症に関連した訴えについて往診を緊急に求められ、速やかに往診しなければならないと判断し往診を実施した場合
② 新型コロナウイルス感染症に関連した継続的な診療の必要性を認め訪問診療を実施した場合
のいずれかに該当する場合には「往診料」や「在宅患者訪問診療料」を算定した日に限り、【救急医療管理加算1】(950点)を算定することができるとしました。
この【救急医療管理加算1】は「当該患者に対し、主として診療を行っている保険医が属する1つの保険医療機関において、1日につき1回のみの算定となる」ことに注意が必要です。
本特例は当該事務連絡が発出された令和3年7月30日以降の往診・訪問診療について算定が可能となります。
2.自宅・宿泊療養中のコロナ患者へ訪問看護を行った場合
厚生労働省は8月4日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その52)」において、新型コロナウイルス感染症の自宅・宿泊療養を行っている者に対して、主治医の指示を受けて緊急に訪問看護を行った場合、その時間にかかわらず、
・訪問看護ステーションによる訪問看護 【長時間訪問看護加算】(5,200円)
・保険医療機関による訪問看護 【長時間訪問看護加算・指導加算】(520点)
を1日1回に限り算定することができるとしています。
また、加算については主治医の指示を受けて緊急に訪問看護を実施した場合のみならず、主治医の指示に基づいて作成した訪問看護計画に定めた訪問看護を実施した場合においても同様に算定することができるとされています。
さらに、この要件については【長時間精神科訪問看護加算】(5,200 円)又は【長時間精神科訪問看護・指導加算】(520 点)の算定についても適用されます。本特例は当該事務連絡が発出された令和3年8月4日以降の往診・訪問診療について算定が可能となります。
3.自宅・宿泊療養中のコロナ患者へオンライン診療等を行った場合
厚生労働省は8月16日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その54)」において、新型コロナウイルス感染症の自宅・宿泊療養を行っている者への電話や情報通信機器を用いた初診、再診で、【二類感染症患者入院診療加算】(250点)を算定できる旨の事務連絡を都道府県等に発出しました。
従来の初診料は214点、電話等再診料は73点のため、同加算の算定で初診は2倍強、再診は4倍強の診療報酬が算定できることになりますが、加算できるのは当該患者に対して主として診療を行っている保険医が属する1つの保険医療機関において1日につき1回のみとなります。
これについても他の臨時的な取扱いと同様に事務連絡発出日の令和3年8月16日以降に行ったオンライン診療等について適用可能となります。
4.その他の新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
本稿では主として自宅・宿泊療養中の方に対して行う診療行為に対する診療報酬上の臨時的な取扱いについてご紹介いたしましたが、新型コロナウイルス感染症に係る臨時的な取扱いは、上記以外にも厚生労働省や地域厚生局のサイトにおいて事務連絡が掲載されていますので、併せてご確認ください。
(文責:税理士法人FP総合研究所)