【No190】医療機関の閉院と第三者承継の比較

 将来の引退時期を検討し、閉院と承継のどちらを選択すべきか憂慮するドクターはたくさんおられるのではないでしょうか。閉院を選択すると自院の患者に迷惑をかけることになり、第三者承継といっても実態が良くわからず、日々悩まれていることと思います。そこで、今回の医業経営FPNewsでは、医療機関の閉院と第三者承継を比較します。なお、第三者承継であっても親子承継であっても、必要な手続に変わりありません。

1.必要となる手続

(1)個人の医療機関の場合

 保健所、厚生局を始めとした公官庁の手続は次のとおりになります。

 上記のとおり、閉院と第三者承継を比較した場合に、旧院長が行う手続はすべて同様になります。第三者承継の手続は、旧院長の医療機関を廃止し、新院長の医療機関を開設します。この場合、保険診療の空白期間が一月発生してしまうため、遡及申請を行うことで空白期間が生じないようにします。

(2)法人の医療機関の場合

 保健所、厚生局を始めとした公官庁の手続は次のとおりになります。以下は、医療法人の理事長が交代するケースに限定しており、医療法人の分院とするケースなどには該当しません。

 上記のとおり、閉院の場合で法人格を維持しないときは、都道府県に対し医療法人の解散の認可申請を行う必要があります。なお、解散をせずに法人格のみを維持する方法もあります。また、解散をする場合には、税務署に解散及び清算結了の異動届出書やこれらの申告書を提出する必要があります。これに対し、第三者承継の場合には、各種変更届を提出するのみになり、閉院の場合に比べ手続は簡略化されます。

2.キャッシュフロー

 引退するドクターの立場から、閉院と承継を比較した際に必要となる費用で大きく異なる点が、医療機関の原状回復費用と承継のマッチング費用になると思われます。医療機関を承継する場合には、原状回復費用が不要になりますが、M&Aの仲介業者などを利用すると承継のマッチング費用が必要になります。承継のマッチング費用は、医療機関の譲渡対価でまかなうことが可能です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)