【No188】税務署の事務年度と税務調査のタイミング

 個人開業医や医療法人における税務調査については、売上げに占める社会保険診療報酬額の割合が高い場合には、その売上げについては明確であることから、通常の事業者の方と比べて実地調査が行われる頻度は低いかもしれません。

 しかし、社会保険診療以外の収入の計上漏れや医薬品の棚卸計上の誤り、また、家事費の必要経費混入など、税務調査が行われることも十分想定しておかなければなりません。

 また、将来の相続(ご本人が相続人となるケース、ご本人が被相続人になるケース)に備えて、税務調査がどのように行われるかも知っておくと少しは安心と思われます。

 そこで、今回は税務調査がどのような時期にどのようなタイミングで行われるのかについて解説します。

1.税務署の事務年度

 一般的に官公庁の事務年度は、4月1日~3月31日で、人事異動もそれに合わせて行われています。ただ、税務署等の国税に関連する組織は、7月1日から6月30日が事務年度となります。※税務署の定期人事異動はその年度7月10日とされています。

 これは、3月には国税の大きなイベントである確定申告があり、その事務処理があるからだと言われています。

 実際に、国税庁Webページなどで各税目の申告の実績や調査実績などの報告がされていますが、たとえば、『令和2年度 所得税及び消費税等の調査等の状況』などにあるデータの集計には、この事務年度が基準となっています。

2.税務署の事務年度と税務調査連絡のタイミング

 1のような状況から、所轄税務署における税務調査にも年間を通じての流れというものがあります

①税務調査の一番多い時期・・・7月~12月

 事務年度を考えていただければ当然で、たとえば、年度末や新年度の初めに取り扱う案件(調査先)の選定を行い、新体制のもと調査が行われることとなります。新年度始まりの7月早々に連絡があるケースもありますが、8月や9月に着手というのが一つの繁忙期となります。

 ちなみに、法人税等においては、決算が2月~5月となる法人は、この7月から12月(事務年度上期)に調査の対象となり、決算が6月~1月の法人は、1月から6月(事務年度下期)に調査対象となることが多いようです。

 また、相続税などであれば、資産規模が大きな案件など時間を要する案件は、新年度の比較的早い時期に連絡があることがあります。

②税務調査が控えられている時期・・・2月~3月

 1月後半から3月までは、税務署もそれに対応する税理士も、確定申告時期という繁忙期なので、この時期の調査はほとんどありません。

 ただ、3月15日の確定申告期が終わると、年度末が近づいてくるので追い込みのように調査の連絡が入ってくることがあります。

③事務年度末を迎える前のもう一つの調査繁忙時期・・・3月下旬~5月

 この時期も比較的調査連絡が多い時期となります。ただ、全てに当てはまるわけではありませんが、電話での確認で終了したケースや、通常、臨宅調査(実際にお客様、税理士、税務署が集って確認する場)は、1日(10時~16時)程度は実施されるところ、半日(午前中)で完了したケースなど比較的論点が絞られている調査が多い感じがします。

 これは、6月の年度末にむけての事務内容の引継ぎを意識してのことかもしれません。ちなみに6月に調査を着手するというのはあまり聞いたことがありません。

 我々にとっては、税務調査というのは試験結果発表ともいえます。お客様からご依頼をいただき、取り組ませていただきました案件に採点がなされ結果発表を受けるという緊張感があります。

 また反面、税務署の視点や注意すべき論点などが確認でき、更なるスキルアップのための経験ができる場でもあります。

 この1年は、コロナ禍の影響で税務調査も通常より少なかった気がします。また、実際に調査があっても、要点を絞って効率よく処理をするというような感を受けました。我々もリモート等を駆使して要領よく業務をしてきたように、税務署側もこの1年で新たな税務調査の対応を体得してきたのではないかと考えます。コロナ禍を経験した新しい事務年度が始まります。

(文責:税理士法人FP総合研究所)