【No180】36協定届の新様式への変更について
令和3年4月1日より、36協定届(時間外・休日に関する協定届)の様式が新しくなります。医療機関においても従業員が1日8時間・1週間40時間※を超える勤務があるにもかかわらず36協定を結んでいないケースが見受けられます。そこで今回は36協定の意義及び上限規制などを含めてご紹介します。
※保健衛生業(病院・診療所など)のうち、常時10人未満の労働者を使用する事業場については、特例措置対象事業場に該当し1日8時間・1週間44時間までとなります。
1. 36(サブロク)協定とは
労働基準法第36条に基づく労使協定であり、企業が法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合には、
・労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結
・所轄労働基準監督署長への届出
が必要となります。また、36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
2. 36協定届の新様式への変更
令和3年4月1日より、36協定届の様式が新しくなり、以下の点が変更となります。
(1)36協定届における押印・署名の廃止
労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印及び署名が不要となります。
※記名はする必要があります。
【36協定と36協定届を兼ねる場合の留意事項】
・労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法(記名押印又は署名など)により36協定を締結すること。
(2)36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
36協定の適正な締結に向けて、労働者代表※についてのチェックボックスが新設されます。
※労働者代表:事業場における過半数労働組合又は過半数代表者
【過半数代表者の選任にあたっての留意事項】
・管理監督者でないこと
・36協定を締結する者を選出することを明らかにした上で、投票、挙手等の方法で選出すること
・使用者の意向に基づいて選出された者でないこと
厚生労働省「36協定届が新しくなります」
3. 36協定の上限規制について
(1)平成31年4月(中小企業については令和2年4月)より、時間外労働の上限が規定されました。従前の36協定では上限規定がなかったため実質無制限に従業員を働かせることができましたが、今回の上限規制では、原則として月45時間・年360時間となり臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・時間外労働・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要があります。
・原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。
・法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。
※「所定」と「法定」の違い
時間外労働については、一般的に考えられている「残業」と「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。
いわゆる「残業」というと、医療機関で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すと考える場合が多いですが、法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」(1日8時間・1週間40時間)を超える時間のことをいいます。
(2)法律違反となる場合の罰則
①36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には労働基準法第32条違反となります。(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)
②今回の法改正では、この36協定で定める時間数について、上限が設けられました。また、36協定で定めた時間数にかかわらず、
・時間外労働は年720時間まで
・時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合
・時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6箇月の平均のいずれかが80時間
・月45時間を超える時間外労働が可能な回数は年6回まで
を超えた場合には、労働基準法第36条違反となります。(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
4. 36協定届の電子申請
労働基準法や最低賃金法に定められた手続については、労働基準監督署の窓口に行くことなく「e-Gov(イーガブ)」から、電子申請を利用して行うことができます。
【届出・申請可能な手続き】
(1)労働基準法に定められた届出など
・時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
・就業規則の届出
・1年単位の変形労働時間制に関する協定届 など
(2)最低賃金法に定められた申請など
・最低賃金の減額特例許可の申請 など
厚生労働省「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について」
(文責:税理士法人FP総合研究所)