【No175】「令和3年度介護報酬改定」について

 令和3年度の介護報酬改定につきまして、昨年12月17日の予算大臣折衝を経て改定率はプラス0.70%と決定されました。またこのうち0.05%を新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価としています。現在、介護報酬改定に伴う関係告示について意見募集が行われておりますが、新型コロナウイルス感染症の対応力が求められる中で改正される令和3年度介護報酬改定のうち、全介護サービスに共通する基本的な考え方について解説します。

1.感染症や災害への対応力強化

◯ 第1の柱は、感染症や災害への対応力強化である。感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制を構築することが求められる。

◯  このため、感染症や災害に対して、日頃からの発生時に備えた取組や発生時における業務継続に向けた取組を、介護報酬や運営基準等による対応、予算による対応等を組み合わせ、総合的に推進していくことが必要である。

2.地域包括ケアシステムの推進

◯ 第2の柱は、地域包括ケアシステムの推進である。認知症の人や、医療ニーズが高い中重度の高齢者を含め、それぞれの住み慣れた地域において、尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取組を推進することが求められる。

◯  このため、在宅サービスの機能と連携の強化、介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化を図るほか、認知症への対応力向上に向けた取組の推進、看取りへの対応の充実、医療と介護の連携の推進が必要である。 また、ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保や、都市部、中山間部など地域の特性に応じたサービスの確保に取り組んでいくことが必要である。

3.自立支援・重度化防止に向けた取組の推進

◯ 第3の柱は、自立支援・重度化防止に向けた取組の推進である。高齢者 の自立支援・重度化防止という制度の目的に沿って、サービスの質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進することが求められる。

◯  このため、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組を連携・ 強化させながら進めていくこと、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの評価をバランス良く組み合わせながら、介護サービスの質の評価を推進していくこと、介護関連データの収集・活用と PDCA サイクルの推進を通じた科学的介護の取組を推進していくことが必要である。また寝たきり防止等、重度化防止の取組を推進していくことが必要である。

4.介護人材の確保・介護現場の革新

◯ 第4の柱は、介護人材の確保・介護現場の革新である。足下の介護人材 不足や将来の担い手の減少を踏まえ、喫緊かつ重要な課題として、介護人 材の確保・介護現場の革新に対応していくことが求められる。

◯  このため、介護職員の更なる処遇改善に向けた環境整備や、介護職員の やりがい・定着にもつながる職 場環境の改善に向けた取組を推進してい くことが必要である。また、人材確保対策とあわせて、介護サービスの質を確保した上での、テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担の軽減を推進していくことが必要である。文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減を推進していくことも必要である。

5.制度の安定性・持続可能性の確保

◯  第5の柱は、制度の安定性・持続可能性の確保である。保険料・公費・利用者負担で支えられている介護保険制度の安定性・持続可能性を高め、費用負担者への説明責任をよりよく果たし、国民の共同連帯の理念に基づく制度への納得感を高めていくことが求められる。 

◯  このため、サービス提供の実態などを十分に踏まえながら、評価の適正化・重点化や、報酬体系の簡素化を進めていくことが必要である。

6.最後に

 令和3年の介護報酬改定に関する審議報告では,コロナ禍の影響もあり従前から議論されてきた論点が先送りされたものもあります。その上で、次回の令和6年の診療報酬と介護報酬の同時改正に向け、大改革の改正が予想される中でしっかり見据えていくことが重要です。

厚生労働省 令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要より

                             (文責:税理士法人FP総合研究所)