【No164】マイナポータルを活用した年末調整手続について
医業経営FPNews【No.157】で令和3年3月より健康保険証の資格情報の確認にマイナンバーカードを利用することについて解説しました。今回はマイナンバーカードの税務上の利用方法の一つである年末調整手続の電子化について解説します。
1.マイナポータルとは
政府が運営するオンラインサービスです。ここでは、子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関等から配信される個人にあったお知らせを受け取ることができます。
2.マイナポータルでできること
マイナポータルで提供される具体的なサービスは以下のとおりです。
「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」『内閣府ホームページ』
3.マイナポータルを活用した年末調整
(1)これまでの年末調整手続
令和元年までの年末調整手続は、扶養控除等の対象者の氏名等や保険料の金額等の項目をすべて手書きで記入し、保険料の支払いを証明する「保険料控除証明書」を提出することで勤務先である医療機関で行われていました。したがって、従業員は、保険料控除証明書等の証明書を医療機関に提出するまで保存し、仮に紛失した場合には再発行の手続が必要となります。また、住宅ローン控除については、1年目の住宅ローン控除を受けるために確定申告をした後に税務署から住宅ローン控除の証明書兼申告書が送付され、住宅ローン控除を受ける間、書類を保存し、年末調整手続の際に医療機関に提出する必要があります。
医療機関においても、令和元年までは一般的には従業員に年末調整の資料を配布し記入してもらい、回収、控除申告書の確認、給与システムに入力をしなければなりませんでした。
「年末調整手続きの電子化に向けた取り組みについて(令和2年分以降)」『国税庁ホームページ』
(2)電子化された年末調整手続
令和2年10月から年末調整手続で使用する書類のうち生命保険料控除証明書や住宅ローンの残高証明書、年末調整のための住宅借入等特別控除証明書等のデータを保険会社等から従業員に交付できるようになりました。そのデータをマイナポータル連携を利用して取得し、電子データとして勤務先である医療機関に提出することができます。
これにより、従業員は控除証明書などに記載された各金額の転記が不要となるため記載誤り等も防ぐことが可能です。また、生命保険料控除の場合には、転記した金額から控除額を計算する必要がありましたが、これが自動的に計算されることになります。医療機関側においても、確認や入力が不要となり年末調整手続の作業の省力化が図れます。
「年末調整手続きの電子化に向けた取り組みについて(令和2年分以降)」『国税庁ホームページ』
「マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化(マイナポータル連携特設ページ)」『国税庁ホームページ』
4.まとめ
年末調整手続を電子化するには医療機関側、従業員側双方で準備体制を整える必要があります。例えば医療機関側で、紙で回収していた場合には電子申請に対応するため新たにソフトウェア等を導入する必要があります。従業員側においてもパソコンが無い場合やスマートフォンが使えない場合にはデータの取り出しが難しくなる可能性があります。
今年は対応している保険会社も限定的ですが、今後は広がることが予想されます。そのため、一度導入して定着すると、医療機関側にも従業員側にもメリットが大きいものと考えられます。
最後に、従業員にはマイナンバーカードの取得を進めてもらい来年に備えましょう。また、医療機関が年末調整申告書に記載すべき事項を電子データにより提供を受けるためには、あらかじめ所轄税務署長に、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありますのでご注意ください。
(担当:山口 海)