【No157】「オンライン資格確認」について

 令和3年3月より、健康保険証の資格情報の確認がオンラインで可能となる「オンライン資格確認」がスタートします。導入に伴い、医療機関・薬局においてはシステム整備が必要となりますが、一定の手続きを経ることにより、顔認証付きカードリーダーの無償提供や補助金が交付されることになっています。

 今回は、主に厚生労働省の資料を中心に、「オンライン資格確認」の概要をご案内致します。

1.オンライン資格確認とは

 オンライン資格確認では、マイナンバーカードのICチップ又は健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができます。

「~オンライン資格確認導入の手引き~」『厚生労働省ホームページ』

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

2.医療機関・薬局で変わること

(1) オンラインで資格を確認することにより、医療機関・薬局の窓口で、直ちに資格確認ができるようになります。

   保険診療を受けることが出来る患者かどうかを即時に確認することが可能となり、レセプトの返戻や窓口業務における入力の手間が減少します。

(2) 常時、支払基金・国保中央会とオンラインで接続されるため、医療機関・薬局は支払基金・国保中央会から情報の提供を受けることができるようになります。

3.オンライン資格確認によるメリット

(1) 保険証の入力の手間削減

   今までは受付で健康保険証を受け取り、保険証記号番号、氏名、生年月日、住所等を医療機関システムに入力する必要がありました。

   オンライン資格確認が導入されれば、マイナンバーカードでは最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことができます。また、保険証でも、最小限の入力は必要ですが、有効であれば同様に資格情報を取り込むことができます。

「~オンライン資格確認導入の手引き~」『厚生労働省ホームページ』

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

(2) 資格過誤によるレセプト返戻の作業削減

      患者の保険資格がその場で確認できるようになるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務が削減されます。

(3) 来院・来局前に事前確認できる一括照会

   一括照会では、事前に予約されている患者等の保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握することができます。

(4) 限度額適用認定証等の連携

   加入者(患者)から保険者への申請がなくても、限度額情報を取得でき、加入者(患者)は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなります。

(5) 薬剤情報・特定健診情報の閲覧

   患者の薬剤情報・特定健診情報を閲覧することができます。

   患者の意思をマイナンバーカードで確認した上で、有資格者等(薬剤情報は医師、歯科医師、薬剤師等。特定健診情報は医師、歯科医師等)が閲覧します。

(6) 災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧

   災害時は、特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができます。

4.医療機関・薬局への補助

(1) 顔認証付きカードリーダーが、医療機関及び薬局に無償提供されます。

 (専用ポータルサイトにおいて、令和2年8月7日より申込受付が始まっています。)

「オンライン資格確認」で利用する「顔認証付きカードリーダー」の申請の受け付けを開始します

『厚生労働省ホームページ』

(2) それ以外の下記の費用は下図の上限額と割合で補助されます。

① マイナンバーカードの読取・資格確認等のソフトウェア・機器の導入

② ネットワーク環境の整備

③ レセプトコンピューター、電子カルテシステム等の既存システムの改修等

「~オンライン資格確認導入の手引き~」『厚生労働省ホームページ』

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

(3) 補助金の交付申請期間は、令和2年11月から開始令和5年3月31日までに補助対象事業を完了させ、令和5年6月30日までに申請することとされています。

5.利用開始に向けた準備

  各種申請等は「オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関等向けポータルサイト」から行います。

「~オンライン資格確認導入の手引き~」『厚生労働省ホームページ』

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

※申請等にはアカウント登録が必要です。

※アカウント登録状況は、令和2年8月5日時点で35,266件となっています。

6.オンライン資格確認の今後

 オンライン資格確認は今後のデータヘルスの基盤となります。

 今後拡大予定の機能

(1) 現在全国の医療機関・薬局で確認できる情報は、薬剤情報・特定健診情報のみですが、対象となる情報が拡大されます。(令和4年夏を目処)

手術、移植、透析、医療機関名といった項目が対象となる予定です。

(2) オンライン資格確認等システムを基盤とし、電子処方箋の仕組みが構築されます。(令和4年夏を目処)紙の受け渡しが不要になり、薬剤情報共有のリアルタイム化(重複投薬の回避)が可能となります。

(3) 閲覧・活用できる健診等が拡大されます。(令和4年度早期)

(4) 現在対象になっていない生活保護受給者の医療券も対象にする(令和5年度中)など順次対象が広がります。

(5) モバイル端末でのオンライン資格確認が検討されています。(令和2年度研究事業)

7.FAQ

オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)

『厚生労働省ホームページ』より抜粋一部加工

Q1.オンライン資格確認を導入したら、患者はマイナンバーカードがないと受診できないのですか?
A1.健康保険証でも受診できます。健康保険証とマイナンバーカードのどちらでもオンラインで資格確認ができるようになりますが、健康保険証の場合は記号番号等の入力が必要となります。

 

Q2.医療機関・薬局では患者のマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うのですか?
A2.医療機関・薬局において患者のマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うことはありません。オンライン資格確認では、マイナンバーではなく、マイナンバーカードのICチップ内の利用者証明用電子証明書を利用します。

 

Q3.医療機関・薬局内のレセプトコンピューター等の情報を支払基金・国保中央会が閲覧できるようになるのですか?
A3.オンライン資格確認は、支払基金・国保中央会から資格情報等を提供する仕組みです。支払基金・国保中央会が、医療機関・薬局の診療情報等を閲覧したり、取得することはできません。

 

Q4.オンライン資格確認は必ず導入しなければいけませんか?
A4.導入は義務ではありませんが、資格の確認を確実に行うことは保険制度の基本です。
また、レセプト返戻の削減、事務の効率化、薬剤情報等の閲覧、 災害への備えとして導入をご検討ください。 今後、マイナンバーカードを健康保険証として持参する患者が増えますので、全ての患者が診療等を受けられるよう導入の検討をお願いします。

 

Q5.患者はマイナンバーカードを持っていればすぐに健康保険証として利用できるのでしょうか?
A5.マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、あらかじめ患者がマイナポータルで保険証利用の申込をすることが必要です。なお、保険証利用の申込をしていない患者が受診した場合には、医療機関・薬局の窓口において、顔認証付きカードリーダーで簡単に保険証の利用登録ができます。

 

Q6.マイナンバーカードの取扱いで気をつけるべきことはありますか?
A6.医療機関・薬局の窓口ではマイナンバーカードは預かりません。患者においては、顔認証付きカードリーダーの場合はカードリーダーに置いていただく、汎用カードリーダーの場合はカードリーダーにかざすとともに受付職員に見せていただきます。

 

Q7.患者がマイナンバーカードを忘れたらどのようにしたらよいですか?
A7.現行の健康保険証を忘れた場合の取り扱いと同様になります。もし、患者が健康保険証を持参していれば、健康保険証によるオンライン資格確認を実施してください。

 

Q8.医療機関・薬局でマイナンバーカードが健康保険証として使えることを、どのように患者さんに伝えたら良いですか?
A8.マイナンバーカードでのオンライン資格確認が利用できることのポスター等を準備し、医療機関・薬局に送付させていただきます。

 

Q9.オンライン資格確認を始めるには、まず何をすればよいですか?
A9.支払基金ポータルサイトから、支払基金に利用の申込みをしていただく必要があります。手続きの内容・方法については、ポータルサイトにアカウント登録いただければ、順次必要なお知らせをします。 併せて、システムベンダ等に改修費用の見積を依頼してください。

 

Q10.オンライン資格確認のためのシステム改修に関して、補助申請を行う時期はいつ頃ですか?
A10.システム改修後、オンライン資格確認の導入準備が完了した後に、支払基金に補助申請を行っていただくことになりますので、医療機関・薬局における導入作業後である11月以降となります。(事前申請ではなく、精算払いとなります。)

 

Q11.レセプトのオンライン請求を利用していませんが、オンライン資格確認を始めることはできますか?
A11.オンライン請求の回線環境を導入することで、オンライン資格確認を始めることが可能です。オンライン資格確認を行うために回線環境の導入をした場合にも、その回線費用は医療情報化支援基金の補助対象となります。

(担当:坂口 雄亮)