【No509】自民党が「『103万円の壁』 Q&A」を公表

自民・公明両党は所得税の基礎控除について、当初の案よりも上乗せする修正案を衆議院に提出し、3月4日の衆院本会議で可決し、参議院に送付しました。与党と国民民主党との協議で焦点の一つとなった「103万円の壁」引き上げについて、自由民主党の考え方をまとめたものが公表されました。

基礎控除の特例の創設

低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追い付いていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設し、政府案と合わせて控除の金額を以下のとおり引き上げる。

① 給与収入200万円相当以下:+47万円(政府案に37万円上乗せ)

② 給与収入200万円相当~475万円相当以下:+40万円(政府案に30万円上乗せ)

③ 給与収入475万円相当~665万円相当以下:+20万円(政府案に10万円上乗せ)

④ 給与収入665万円相当~850万円相当以下:+15万円(政府案に5万円上乗せ)

(注1)①の上乗せは恒久的な措置。②~④の上乗せは令和7年分及び令和8年分の措置

(注2)給与所得者については、年末調整において適用する。その他所要の措置を講じる。

(注3)課税最低限は160万円(一般的な社会保険料支払いがある場合、188万円)となる。

(注4)今回の修正後も、令和5年度税制改正大綱に明記したとおり、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き責任を持って確保する。

Q.なぜ基礎控除をさらに上乗せ?

A.生計費を考慮し低所得者層の税負担軽減

政府与党は昨年末の税制改正大綱を決定した際、いわゆる「年収103万円の壁」について、基礎控除と給与所得控除をそれぞれ10万円引き上げ、123万円にしました。これに先立ち、自公両党は国民民主党との間で「178万円を目指して引き上げる」とする3党幹事長合意を結んでいます。

年明けからの3党協議で、国民民主党から「基礎控除の引き上げは憲法で定める生存権に基づくべき」との主張がありました。これを受けて、自公両党は、東京都の生活保護基準や最低賃金の水準等を考慮し、年収200万円以下の低所得層の税負担を軽減するため課税最低限を123万円から160万円に引き上げることにしました。

Q.なぜ所得制限を設けた?

A.異なる政策目的。1人当たりの減税額を平準化する

まず、課税最低限を160万円とすることと、年収200万円以上の所得層に対して段階的に基礎控除を上乗せすることは政策目的が異なります。200万円以下の層は低所得者層の税負担に対する配慮として恒久的措置としました。一方、中所得層を含めた税負担の軽減は、物価上昇に賃金上昇が追い付いていない現状を踏まえた措置として、令和7・8年の2年間に限定します。

その際、高所得者優遇とならないよう、基礎控除の上乗せに段階を設けて、当初案と併せて一人当たりの減税額を平準化するようにしました。

*最終的には法案をもとに国会を通過して初めて法律となりますので、現段階が確定ではないことをご了解ください。参議院は与党が過半数を占めているため、成立は確実な見通しですが、3月末までの年度内の成立を目指す予定です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)