【No508】従業員に支給する食事の取扱いについて
福利厚生の一環として従業員に残業食や食事代の補助をされている事業者も多いかと思います。今回の記事では、従業員への食事の支給等に関する税務上の取扱いについて解説します。
1.原則的な取扱い
役員や従業員(以下、「従業員等」といいます。)に支給する食事は、原則として従業員等に対する「給与」として課税されます。
2.課税されない場合(「福利厚生費」となる場合)
– 前提となる要件 –
○全ての従業員等が対象となっていること
○食事代が社会通念上一般的と認められる範囲内の金額であること
(1)従業員等が食事代を負担している場合
次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。
①従業員等が食事の価額の半分以上を負担していること。
②次の金額が1か月当たり税抜3,500円(非課税限度額)以下であること。
(食事の価額※)-(従業員等が負担している金額)
※弁当などを購入して支給している場合には、業者に支払う購入金額となります。
また、社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額となります。
なお、この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。
(2)残業等を行うときに食事を支給する場合
残業または宿直もしくは日直をした従業員(通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限ります。)に支給する食事は、無料で支給しても給与として課税されません。
3.注意点
(1)食事代として金銭を支給した場合
従業員等に対して給与に加算する形や現金で食事代を補助する場合には、食事という現物ではなく金銭を支給するものであることから、上記2(1)の要件を満たしていても、その補助をする全額が給与として課税されることとなります。
ただし、深夜勤務者※に対する次の金銭の支給については課税されません。
○深夜勤務に伴う夜食を現物で支給することが著しく困難であるため、その夜食の現物支給に代え通常の給与に加算して勤務一回ごとの定額で支給する金銭
○その一回の支給額が税抜300円以下のもの
※深夜勤務者とは、労働協約又は就業規則等により定められた正規の勤務時間による勤務の一部又は全部を午後10時から翌日午前5時までの間において行う者をいいます。
(2)非課税限度額(3,500円)の判定において
非課税限度額 (月額3,500円)以下であるかどうかの判定は、消費税等の額を除いた金額をもって行いますが、その金額に10円未満の端数が生じた場合にはこれを切り捨てることとなります。
また、食事の提供方法により適用される税率が異なりますので、税抜計算を行う際には注意が必要です。
○事業者が弁当を単に購入して支給する場合
事業者と弁当事業者との取引は、飲食料品の譲渡となりますので、軽減税率(8%)が適用されます。
○弁当事業者が弁当を提供する際に、配膳等の役務の提供を伴う場合
いわゆる「ケータリング」として標準税率(10%)が適用されます。
○食堂での食事
飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供に該当し、標準税率(10%)が適用されます。
4.具体例
従業員に1か月当たり、次のとおり、弁当の提供による昼食の支給をした場合
○弁当の価額・・・・・・・・・・・・・・・ 600円(消費税込み)
○従業員等が負担している金額・・・・・・・ 400円
○1か月における弁当の提供をした日数・・・ 20日
《計算・判定》
Ⅰ 従業員等が食事の価額の半分以上を負担しているかどうかの判定
400円≧600円/2 = 300円 ∴半分以上を負担している
Ⅱ 食事の価額から従業員等の負担している金額を控除した残額の月額
(600円-400円)× 20日 = 4,000円
Ⅲ Ⅱから消費税等の額を除いた金額
4,000円-4,000円×8/108 = 3,703.703…円 ⇒ 3,700円(10円未満切捨て)
Ⅳ 非課税限度額(3,500円)の判定
上記Ⅲが非課税限度額を超える(3,700円>3,500円)ため、支給した食事の価額から従業員等の負担している金額を控除した残額の月額4,000円(上記Ⅱ)が、給与として課税されます。
(文責:税理士法人FP総合研究所)