【No505】「出向」と「人材派遣」における消費税の取扱い
近年、人材不足の改善策として、一定期間、他社から労働者の派遣を受けるケースが増えてきていますが、その受け入れにおける契約が「出向」か「人材派遣」かにより、支払対価の消費税の取扱いが異なります。
1.「出向」の取り扱い
出向とは、派遣される使用人等が出向元事業者と雇用関係を維持しながら、出向先事業者との間においても新たに雇用契約関係に基づき一定期間継続的に勤務する形態をいいます。
事業者が事業として他の者から役務の提供を受けた場合、課税仕入れに該当しますが、その役務の提供が雇用契約に基づくものであり、その支払った対価が給与所得となる場合には、課税仕入れには該当しません。
事業者が子会社や関連会社に使用人等を出向させる場合、出向者に対する給与の負担方法には下記のようなものがありますが、いずれの方法であっても、出向者に対する給与として取り扱われるため、出向元と出向先の双方ともに消費税の課税関係は生じないことになります。
(1)出向元が給与の全額を支払い、その一部を出向先に請求する方法
(2)出向先が給与の全額を支払い、その一部を出向元に請求する方法
(3)出向元と出向先がそれぞれ給与の一部を支払う方法
2.「人材派遣」の取り扱い
人材派遣とは通常、人材派遣契約に基づき人材派遣会社が、自社の使用人等を他の事業者に派遣するものであり、出向とは異なり、派遣された使用人等の雇用関係は人材派遣会社との間にしかありません。
従って、人材派遣は、人材派遣会社による派遣先事業者への役務の提供ということになるため、人材派遣会社が受け取る対価は課税売上げとなり、一方の支払事業者側では課税仕入れとなります。
※人材派遣業を行うためには、原則、厚生労働省から労働派遣業に基づく「労働者派遣事業許可」という認可を受ける必要があります。
3.参考 消費税基本通達
(出向先事業者が支出する給与負担金)
5-5-10 事業者の使用人が他の事業者に出向した場合において、その出向した使用人(以下5-5-10において「出向者」という。)に対する給与を出向元事業者(出向者を出向させている事業者をいう。以下5-5-10において同じ。)が支給することとしているため、出向先事業者(出向元事業者から出向者の出向を受けている事業者をいう。以下5-5-10において同じ。)が自己の負担すべき給与に相当する金額(以下5-5-10において「給与負担金」という。)を出向元事業者に支出したときは、当該給与負担金の額は、当該出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う。
(注) この取扱いは、出向先事業者が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用する。
(労働者派遣に係る派遣料)
5-5-11 労働者の派遣(自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他の者の指揮命令を受けて、当該他の者のために労働に従事させるもので、当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう。)を行った事業者が当該他の者から収受する派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する。
(参照:国税庁ホームページ タックスアンサー№6475)
(文責:税理士法人FP総合研究所)