【No493】従業員社宅の活用について

法人が従業員に社宅を貸与している場合において、従業員が1か月あたり一定額の家賃(「賃料相当額」の50%以上)を法人に支払うときは、給与として課税されません。今回は従業員に対して社宅制度を活用する場合の注意点などについて解説します。(なお、役員社宅の活用については、企業経営FPNewsの№370をご参照してください)

1.賃料相当額の算出

賃料相当額は以下の(1)から(3)を合計した金額をいいます。

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

※他から借り受けた社宅を貸している場合、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認する必要があります

2.給与として課税される範囲

(1)従業員に無償で貸与する場合

   ⇒ 賃料相当額が、給与課税されることになります。                                                 

      ⇒ 看護師や守衛など、仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な従業員に対して、

     仕事に従事させる都合上、社宅を貸与する場合には、無償で貸与しても給与課税されない場合があります。

(2)従業員から賃料相当額より低い家賃を受け取っている場合

   ⇒ 受け取っている家賃と賃料相当額との差額が、給与課税されることになります。

   ⇒ 但し、従業員から受け取っている家賃が、「賃料相当額の50%以上」であれば、

                    受け取っている家賃と賃料相当額との差額は、給与課税されません。

(3)現金で支給される住宅手当や従業員個人が直接、賃貸借契約をしている場合の家賃負担

   ⇒ 社宅の貸与には該当しないため、給与課税されます。

3.給与課税の具体例

(1)賃料相当額30,000円の社宅を従業員に無償で貸与した場合

            ⇒ 賃料相当額30,000円が給与課税されます。                                                 

(2)賃料相当額30,000円に対して、従業員から10,000円の家賃を受け取っている場合

     ⇒ 賃料相当額30,000円と家賃10,000円の差額20,000円が給与課税されます。

(3)賃料相当額30,000円に対して、従業員から20,000円の家賃を受け取っている場合

     ⇒ 賃料相当額30,000×50%=15,000円≦家賃20,000円となるため、賃料相当額と家賃の差額10,000円は

                   給与課税されません。

4.従業員社宅制度を活用する場合の注意点

(1)社内規定を作成・整備すること

社宅制度を活用する場合、法人の福利厚生の一環であることから、まずは社内規程を作成する必要があります。

具体的には、社宅制度の対象となる従業員の条件や範囲、家賃負担額の上限、社宅制度の適用期間、退職時の退去要件などを

社会通念上、一般的かつ公平な観点から社内規程を作成・整備することが重要です。

税務調査時には、社内規程の有無や内容を確認されることになります。社内規程がなかったり、明らかに公正性を欠くような特定の従業員のみに社宅制度を適用している場合などは、制度自体が否認される可能性もありますので、注意が必要です。

(2)社宅の賃貸借契約は法人名義であること

賃貸物件を社宅制度として活用する場合、賃貸借契約の名義人は法人である必要があります。

従業員個人が契約している物件の家賃を法人が負担したとしても、それは「住宅手当」等に該当することになります。

この場合、家賃負担額の全額が給与として課税されることになるため、注意が必要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)