【No482】決算賞与を支給する際の注意点

企業の業績が好調な場合、決算時の利益に応じて従業員に決算賞与を支給することがあります。決算賞与は一定の要件を満たした場合には、未払計上により損金経理した金額を経費化することができます。

1.決算賞与について

企業の業績が好調な場合、利益を従業員に還元するために、一般的な夏と冬のボーナスとは別に臨時の賞与を支給することがあります。これを決算賞与といいます。

決算賞与は、通常、決算時の利益状況をもとに支給対象者や金額等を決定することになるため、決算日時点では未払計上する場合が多くなります。

未払計上した決算賞与については、一定の要件を満たした場合に限り、当該事業年度の損金として認められることになります。

2.未払の決算賞与を損金計上するための要件

未払の決算賞与を当該事業年度の損金として計上するためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

(1)その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての従業員に対して通知していること。

※1.従業員に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマーや臨時雇い等の有期雇用者とその他の正社員などの無期雇用者を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。

※2.税法上、各従業員への通知方法は明確に定められているわけではありません。ただ、税務調査時に損金性を否認されないためにも、通知したことなどを証明する書面やメールなど記録が残る方法で通知するとともに、書面の場合には従業員から署名や確認印を、メールの場合には従業員から確認した旨の返信メールを受け取ることが重要です。

(2)上記(1)の通知をした金額を、通知したすべての従業員に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。

(3)支給額について、上記(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

3.その他注意点

(1)支払方法

決算賞与として認められるには、「支払時期」や「支払通知」が重要でした。税務調査においては、その点についての確認があります。銀行振り込みであれば、記録が残りますので安心です。もし、現金で手渡しする場合には、受取証などを準備しておきましょう。

(2)資金繰り

利益が出ている年度とはいえ、多額な賞与資金の流出については、注意が必要です。決算による法人税等の支払を含め、短期的な資金ショートを起こすことがないように注意します。

(3)従業員のモチベーションの維持

決算賞与は従業員のモチベーションにつながりますが、決算賞与は毎年もらえると従業員が考えるならば、決算賞与の出ない年はモチベーションが下がることになります。決算賞与の通知をするタイミングを捉えて、従業員とのコミュニケーションを図るのはいかがでしょうか。

(4)就業規則の確認

就業規則の賃金規程のなかに、賞与について言及している法人で、賞与の支給をしないとしている法人はないでしょうか。

そもそも、支払の規定がない場合には、損金経理をしていても認められない場合もありますので、注意が必要です。

(5)使用人兼務役員に対する支給

使用人兼務役員に対して支給する賞与については、使用人としての職務に対応する部分の金額が損金として認められる金額となります。他の使用人に対する金額の査定と齟齬がないように注意します。

(文責:税理士法人FP総合研究所)