【No477】予約サイトで事前決済した宿泊予約者に対する適格簡易請求書の交付
国税庁では、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関するQ&A」の公表後、多く寄せられるご質問や新たにお示しすべき事項について整理し集約したものを公表しています。その中でもお問い合わせの多い質問として追加された項目についてご紹介します。
【質問】
当社は、ホテルを運営しています。予約サイトを通じて受けた予約について、予約サイト経由で決済が行われた場合、フロントでは現金の授受等が行われないことから、領収書の交付を行っていませんが、どのように適格簡易請求書を交付すればいいでしょうか。
【回答】
適格請求書や適格簡易請求書は、その名称を問わず、記載事項を満たしたものであれば、必ずしも領収書や請求書である必要はありません。そのため、予約サイトや旅行代理店等(以下「予約サイト等」といいます。)を通じて受けた予約で、かつ、予約サイト等を経由して決済が行われた場合には、領収書ではなく、宿泊明細書など適宜の様式により、以下の記載事項を満たした書類(適格簡易請求書)を交付することが考えられます。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率(※)
※ 「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。
なお、予約サイト等が宿泊者の委託を受けてホテルの宿泊予約を行う場合(いわゆる手配旅行)と異なり、パックツアーなど、宿泊サービスを含めた一連の旅行サービスとして予約サイト等が提供する場合(いわゆる企画旅行)、通常、予約サイト等が宿泊客に対して課税資産の譲渡等を行ったものとなりますので、当該予約サイト等が宿泊客に対して適格簡易請求書を交付する必要があります(この場合、貴社は、予約サイト等に対して適格請求書の交付義務が生じることとなります。)。
(注) 上記記載事項のうち④の「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」は、貴社が課税売上げとして認識している金額となります。そのため、予約サイト等との間で手数料等が差し引かれて精算される場合であっても、当該手数料等差引前の金額となると考えられます。
また、予約サイト等が宿泊代金に併せて予約手数料を宿泊客から徴収している場合や、値引き販売を行っている場合には、適格簡易請求書に記載される金額(宿泊代金)が、宿泊客が実際に予約サイト等を通じて支払った代金の総額と異なることも考えられますが、消費税法上問題はありません。
(参考) 社員の出張等に伴う宿泊費で、社員に支給するもののうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(出張旅費等特例)ので、その場合には、ホテルを利用する側の事業者側において必ずしもホテルから適格簡易請求書を受領する必要はありません。出張旅費等特例の詳細については、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&Aの問107」をご参照ください。
※ 予約サイト等が適格請求書発行事業者でない場合、宿泊者は適格請求書の交付を受けることはできないこととなります。他方、出張旅費等特例の要件を満たすのであれば、当該特例の適用を受けることは可能です。
出典:国税庁 お問い合わせの多いご質問
(文責:税理士法人FP総合研究所)