【No445】源泉徴収が不要となる子法人株式等の配当について
令和4年度改正により、一定の内国法人が支払いを受ける配当等で一定のものについて、源泉徴収が不適用とされます。これは令和5年10月1日以後に支払いを受けるべき配当等について適用されます。
(1)概要
一定の内国法人(注1)が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さないこととし、その配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととされました。
①その一定の内国法人がその配当等の額の計算期間の初日からその末日まで継続して発行済株式等の全部を保有する株式等(注2、3)(以下「完全子法人株式等」といいます。)に係る配当等
②その配当等の額に係る基準日等(配当等の額の計算期間の末日等)(注4)において、その一定の内国法人が直接に保有する他の内国法人(一般社団法人等を除きます。)の株式等の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等(注3)(上記①の完全子法人株式等に該当する株式等を除きます。)に係る配当等
(注1) 「一定の内国法人」とは、内国法人のうち、一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除きます。)、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされている一定の法人(以下「一般社団法人等」といいます。)以外の法人をいいます。
(注2) 法人税法第 23 条第5項に規定する完全子法人株式等をいいます。
(注3) その一定の内国法人が自己の名義をもって有するものに限ります。
(注4) 法人税法施行令第 22 条第1項に規定する基準日等をいいます。
(2)支払いを受けるべき配当等について
令和5年10月1日以後に支払いを受けるべき配当等に係る源泉所得税について不徴収とされます。この場合の「支払いを受けるべき」とは、その配当等の決議があった日、効力が生じた日とされますので、実際に配当等が支払われた日ではありませんので、注意が必要です。
7月末決算法人の場合、通常であれば、基準日は7月31日となり、9月下旬に株主総会が開かれます。配当の決議があった日、効力が生じた日は総会の日付となります。
したがって、配当等することが令和5年9月30日までに確定している場合、その配当等の支払が令和5年10月1日以後に行われたとしても不適用措置の適用対象にはなりません。
(3)自己の名義をもって有するものとは
配当等を受ける内国法人が自己の名義で所有する株式等に限定した上で出資割合が判定されます。したがって、兄弟会社等関連法人の株式所有分を含まないで判定されますので、法人税の受取配当等の益金不算入制度を適用する場合の判定方法とは異なります。
(4)(1)②における基準日等において3分の1超を有しているとは
株式会社は、一定の日を定めて、当該日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができます(会社法第124条1項)。
法人税法施行令においても、株式会社がする剰余金の配当で当該剰余金の配当を受ける者を定めるための会社法第124条第1項(基準日)に規定する基準日とされています。通常であれば、決算期末日が該当します。
基準日において3分の1超の保有が要件となっているため、受取配当金の益金不算入制度のように配当等の計算期間を通じて継続保有している必要がありません。そのため、益金不算入制度では「その他株式等」に分類されるものであっても配当等について源泉徴収が不要になるケースも生じることとなります。
出典:TKC税務研究所 国税庁:源泉所得税の改正のあらまし
(文責:税理士法人FP総合研究所)