【No437】インボイス制度対応のためのシステム修正費用について
令和5年10月1日から開始されるインボイス制度対応のためにシステムを修正される事業者も多いでしょう。その際に発生する費用の取扱いについてまとめてみました。
(1)システム修正内容の例示
適格請求書発行事業者として登録を受け、インボイス制度に対応するため、自社の固定資産であるPOSのレジシステム、商品の受発注システム及び経理システムのプログラムにつき、以下の修正を外部に委託する場合。
① 現行の請求書等のフォーマットに登録番号、軽減税率の対象品目である場合はその旨、税率ごとに合計した対価の額(税抜き又は税込み)、適用税率及び消費税額等を追加
② 積上げ計算方式による仕入税額の計算に対応するため、集計方法などの税額計算の要素につきインボイス制度に対応する仕様変更等
③ 受発注システム上で受領し、又は取り込んだ請求書に記載された取引先の登録番号と国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトに公表されている情報を自動で照合し、確認する機能を新たに搭載するもの
④ これまでシステムで作成した請求書等を紙媒体で出力し交付していたものを、電子交付まで自動で行えるよう仕様変更するものボイス制度に対応する仕様変更等
(2)判断基準
プログラムの修正が、ソフトウエアの機能の追加、機能の向上等に該当する場合は、その修正に要する費用は資本的支出に該当し、現状の効用の維持等に該当する場合は、当該費用は修繕費に該当します。
(3)資本的支出であっても修繕費として取扱い出来る場合
① 修正に要した費用の額が20万円に満たない場合
② 費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合
ア.その金額が60万円に満たない場合
イ.その金額が、修正に係るソフトウエアの前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
国税庁:「消費税のインボイス制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」
(4)修繕費と資本的支出のフローチャート
修繕費と資本的支出の区分についての原則的な考え方は、上記インボイス制度対応のためのプログラム改修等に限りません。以下の法人税基本通達もご確認ください。
法基通7-8-3(少額又は周期の短い費用の損金算入)
一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等(以下7-8-5までにおいて「一の修理、改良等」という。)が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、7-8-1にかかわらず、修繕費として損金経理をすることができるものとする。
(1) その一の修理、改良等のために要した費用の額(その一の修理、改良等が2以上の事業年度にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額。以下7-8-5までにおいて同じ。)が20万円に満たない場合
(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合
(注) 本文の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととする。以下7-8-5までにおいて同じ。
法基通7-8-4(形式基準による修繕費の判定)
一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。
(1) その金額が60万円に満たない場合
(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
法基通7-8-5(資本的支出と修繕費の区分の特例)
一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(7-8-3又は7-8-4の適用を受けるものを除く。)がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。
(文責:税理士法人FP総合研究所)