【No434】未払残業代支給の取扱いについて

 過去の未払残業代を一括して支給する場合に、受給する従業員については本来の各支給日が定められているか否かによって所得の帰属する時期が異なります。一方、支給する会社については本来の支給日が定められているか否かに関わらず未払残業代の支給日の属する事業年度の損金の額として取り扱います。また、所得税の源泉徴収額の計算方法は本来の各支給日が定められているか否かによって異なります。

1.従業員についての取扱い

(1)過年分の給与の修正分として支給を受ける場合

 過去の各支給日について残業代を再計算して各不足分を一括で支給を受ける場合には、過年分の給与の修正となり本来の各支給日が定められていることとなりますので、本来の各支給日の属する各年分の給与所得となります。そのため、過年分の年末調整や確定申告の修正が必要となります。

(2)一時金として支給する場合

 過去の残業代を解決金等の名目で一時金として支給を受ける場合には、本来の各支給日が定められていないので、支給日における賞与として取り扱います。そのため、従業員においては支給日の属する年分の給与所得となりますので、過年分の所得には影響がありません。

2.会社についての取り扱い

 上記の1.(1)と(2)のどちらの場合でも、会社においては未払残業代の支給日の属する事業年度の損金として処理することになります。未払残業代は過去の労働への対価ではありますが、支給日に支払債務が確定したものとして支給日の属する事業年度に処理を行います。

3.源泉所得税の取り扱い

 上記の1.(1)と(2)のどちらの場合でも、支給時に所得税の源泉徴収が必要になります。源泉徴収税額については上記の1.(1)の場合は、過去の各年分の年末調整の修正をして差額を徴収します。上記の1.(2)の場合は、賞与として源泉徴収税額を計算します。

 通常、賞与にかかる源泉徴収税額は前月の給与支給額に基づいて計算を行います。ただし、従業員が既に退職している場合には前月の給与はありませんので、「前月に給与の支払がない場合」の賞与の源泉徴収税額の計算方法を使って計算することになります。

<前月に給与に支払がない場合の賞与の源泉徴収税額>

(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)

(2)上記(1)の金額を月額表に当てはめて税額を求める。

(3)上記(2)の税額 × 6(または「12」)

この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。

(注)賞与の計算期間が6か月を超える場合には、上記計算式の「12」を使って計算します。

(文責:税理士法人FP総合研究所)