【No425】中小企業の経営資源の集約化に資する税制~中小企業事業再編投資損失準備金~
経営資源の集約化(M&A)によって生産性向上等を目指す、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいてM&Aを実施した場合に、株式の取得後に、簿外債務、偶発債務等が顕在化するリスクに備えるため、その株式等の取得価額を準備金に積み立てたときは、その積み立てた金額を損金算入できる措置(中小企業事業再編投資損失準備金)が活用できます。
1.中小企業事業再編投資損失準備金制度の概要
中小企業者(注)のうち、令和6年3月31 日までに事業承継等事前調査(実施する予定のDD※の内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けたものが、株式取得(購入による取得に限る)によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です(措法55の2①)。
※DD(デュー・デリジェンス):M&Aを実施するにあたって、買手企業が売手企業に対して、財務や法務の状況について詳細に調査すること。
この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入されます。
(注)中小企業者とは、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって租税特別措置法の中小企業者に該当するもの。
【損金算入の要件】
①青色申告書を提出する中小企業者が
②令和6年3月31日までに
③経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項が記載された)の認定を受け
④他の法人の株式等を購入により取得し(取得価額が10億円を超える場合を除く)
⑤事業年度終了の日まで引き続き有している場合に
⑥その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積立てたとき
【益金算入の要件】
①その株式等の全部又は一部を有しなくなった、帳簿価額を減額した場合等において、中小企業事業再編投資損失準備金を取り崩したとき
②事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間で、その経過した中小企業事業再編投資損失準備金残高の均等額を取り崩したとき
2.中小企業事業再編投資損失準備金制度の申請の流れ
①M&Aの相手方が決まったタイミング(基本合意後等)で、経営力向上の内容に株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定し、主務大臣の認定を受けます。申請時に、併せて「事業承継等事前調査チェックシート」を作成し、添付します。
②認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、主務大臣に対して事業承継等を実施したこと及び事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書の交付を受けてください。
③税法上の要件を満たし、税務申告において、①の申請書、①の認定書、②の確認書(いずれも写し)を添付する。
出典:中小企業庁財務課「令和5年度4月 中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き」
(文責:税理士法人FP総合研究所)