【No418】【インボイス制度】従業員が経費を立替払いした際の精算書とシステムの対応について
請求書・領収書等の宛名について、会社名の名前を正確に記載してもらうケース、上様、あるいは宛名なし、従業員の宛名といったケースが実務ではよく見受けられます。
今回は従業員の宛名で記載された請求書・領収書の対応を見て行きましょう。
インボイス制度では、原則として「参考1」の必要事項が記載された適格請求書(以下、「インボイス」という。)を保存しておくことが、仕入税額控除の要件となります(新消法30⑦、新消令49①)。
従業員が経費を立替払いした際の領収書等の宛名が“従業員名”の場合、「参考1」の必要事項⑥を満たさないため、企業が仕入税額控除を受けるには、インボイスに加え、“企業名”が記載された「立替金精算書」の作成・保存をすることが必要になります。
企業が従業員名の宛名の領収書等を受領した場合、自社の支出であることを明らかにするため、企業名を記載した立替金精算書を作成し、従業員名のインボイスと併せて保存することで課税仕入れに係るインボイスの保存があるものと取り扱われます(インボイス通達4-2)。
社内文書でも社名(事業者名)の記載が必要になりますのでご注意下さい。
なお、立替金精算書の保存等については、必ずしも書面である必要ではなく、システムで管理することも可能です。
「参考1」インボイスに記載する必要事項
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号 ②課税資産の譲渡等を行った年月日 ③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容 ④税率ごとに区分した課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率 ⑤税率ごとに区分した消費税額等 ⑥書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称 |
同通達では書面対応を前提としていますが、企業が従業員に必要事項を入力してもらい、自社のシステムで立替金の精算内容を管理する場合として、従業員が紙のインボイスを受領し、会社の立替金精算システムに入力して、別途、受領したインボイスを会社に提出しているケースでは、この場合、システム入力にあたって、電子帳簿保存法施行規則で定められた真実性の確保や見読可能性の確保等が必要となることに注意が必要です。
真実性の確保としては、電子計算機処理システムの概要書や仕様書、操作説明等の備付けを行うことが挙げられ、見読可能性の確保としては、電磁的記録の保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備付け、記録事項を整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくことが必要となります。
また、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしておくことの要件もあります。
一方、従業員の経費の立替払いで宛名に会社名が記載されたインボイスや宛名不要の簡易インボイス(スーパー等のレシートなど)を受領した場合には、仕入税額控除を受けるにあたり、立替金精算書を作成・保存する必要はありません。
(文責:税理士法人FP総合研究所)