【No399】会社が実施する従業員旅行等の税務上の取扱い
コロナ禍の経済対策として全国旅行支援が開始されました。経営者の中にはコロナ禍以前のように、従業員の慰安旅行を検討されている方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、従業員旅行等の費用に係る税務上の取扱いについて説明します。
1.基本的な考え方
会社が従業員の慰安旅行や研修旅行を行った場合、会社が負担した費用が『福利厚生費』などの経費として認められるか、旅行に参加した人の『給与』として課税されるかどうかは、その旅行の条件を総合的に勘案して判定されます。
2.従業員の慰安旅行の取扱い
従業員の慰安旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという「少額不追及」の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれの要件も満たすときは、原則として、その旅行費用は『給与』として課税しなくてもよいとされています。
① 旅行の期間が4泊5日以内であること
(海外旅行の場合には、海外での滞在日数が4泊5日以内であること)
② 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
(工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上は参加する必要があります。)
※1.上記のいずれの要件を満たしている旅行であっても、自己の都合により参加しなかった人に金銭を支給する場合には、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭相当額が『給与』として課税されます。
※2.会社が負担する旅行費用の金額の上限に関しては、明確な要件は定められていません。ただし過去の判例や国税庁のタックスアンサーより、上記のいずれの要件を満たしていることを前提に、会社負担の旅行費用について一人当たり10万円程度であれば、『給与』課税はないものと考えられます。
(10万円以下であれば自動的に『給与』課税されず、『福利厚生費』などの経費として認められるというわけではなく、あくまでも「社会通念上一般に行われていると認められる範囲」か否かを個別事例ごとに総合的に勘案して判断されることになります。)
※3.上記いずれかの要件を満たさず、『給与』課税を受けた人が「役員」であった場合、法人税法上の臨時の『役員賞与』に該当することになるため、法人税等の計算において損金算入が認められません。
※4.以下のような旅行は、従業員のための慰安旅行には該当せず、『給与(役員賞与)』や『交際費』として取り扱われることになります。
① 役員だけで行う旅行
② 取引先に対する接待等のための旅行
③ その他、実質的に私的旅行と認められる旅行等
3.研修旅行の取り扱い
研修旅行については、会社の業務を行うために直接必要な場合には、その費用は『給与』として課税されません。しかし、以下のような旅行は、原則として、会社の業務に直接必要ないと判断され、研修旅行には該当しません。
① 同業者団体が主催する観光を主目的とした団体旅行
② 旅行の斡旋業者などが主催する団体旅行
③ 観光渡航の許可をもらい海外で行う研修旅行
(文責:税理士法人FP総合研究所)