【No378】中小PMIガイドラインの公表 (中小M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた支援メニュー)
近年、事業承継の手段のひとつとして、中小企業においても M&A が選択されるケースが急増しています。
中小企業庁は、2020年3月に後継者不在の中小企業等に向けて、M&Aを適切な形で進めるための手引きとして「中小M&Aガイドライン」を策定しました。さらにこれを支援機関において徹底するため、2021年8月には「M&A支援機関登録制度」を創設しています。これらの内容は主にはM&Aの成立(M&Aの譲渡側)に関するものとなっていました。
M&A を成功に導くためには「事業の引継ぎ(M&Aの成立)」と「引継ぎ事業の継続・成長(PMI の実施)」を車の両輪で進めることが必要と考えられています。
M&Aにおける最終契約の締結・決済(M&Aの成立)はいわば「スタートライン」に過ぎません。その後の統合等に係る取組(PMI:Post Merger Integration)こそが重要であるにもかかわらず、中小企業にはPMIの重要性についての理解は十分に浸透しておらず、PMIの取組を支援する支援機関も十分に存在していない状況です。
こうした状況を踏まえ、2022年3月に主にM&Aの譲受側が取り組むべきと考えられるPMIの取組を整理し「中小PMIガイドライン」として策定されました。読み手は中小企業とその支援に携わる支援機関が想定されています。
1.PMIとは?
一般的にPMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後の一定期間内に行う経営統合作業を表します(狭義のPMI)。
当ガイドラインでは、上記のPMIの前後の期間における取組が重要であると考え、狭義のPMIの「前(プレ)」、つまりM&A成立前の取組と、狭義のPMIの「後(ポスト)」の継続的な取組を含めたプロセス全般(PMIプロセス)をより広義の概念として(中小)PMIと定義されています。
M&Aの「成功」は、その成立でなく、M&Aの目的として当初に期待された効果を実現できるかどうかによります。実績が蓄積されている大企業のM&Aでは、PMIの取組が最重要ともいわれています。
PMIの取組は主に、「経営統合」、「信頼関係構築」、「業務統合」の三つの領域で定義されています。
【出典:中小企業庁 「中小 PMI ガイドライン」】
2.中小PMIガイドラインの概要等
本ガイドラインでは、PMIの推進体制や各フェーズにおける各種取組のゴール、ポイント、具体的な取組の手順が記載されています。
また、M&Aの検討段階からPMIに向けた準備を進めることがPMIを円滑に実行する上で欠かせない点や、M&A成立後概ね1年の集中実施期間を経て、それ以降も継続的に取組を実施することが重要であることが示されています。
規模の大小等を問わず、幅広い中小企業においてM&Aが広がりつつあることを踏まえ、比較的小規模な中小企業であっても対応できるように「基礎編」と、必要に応じてより高度な取組にも挑戦できるように「発展編」に分けて記載されています。
適切に取り組まなかった場合にどのような問題が生じるかという失敗事例に加え、具体的な成功事例も掲載されているため、PMIの取組の重要性を理解できるようになっています。成功・失敗事例については、M&A経験のある全国の中小企業から直接ヒアリングされたものとなっています。
「M&Aは成功した」といえるようにするためにも、当ガイドラインを活用してみてはいかがでしょうか。
【出典:中小企業庁 「中小企業白書 2022年版」】
【出典:中小企業庁 「中小PMIガイドライン」】
中小企業庁 「中小PMIガイドライン」
(文責:税理士法人FP総合研究所)