【No344】中小企業経営者が毎月確認すべき経営指標 その2
企業経営者は、現在の自社の業績と外部環境とを勘案し、経営の意思決定を速やかに行う必要があります。そのためには、自社の現在の業績は常に把握しておかなければなりません。そこで、読み解くことが難解な財務諸表を可視化し、感覚的に理解することが欠かせません。そこで、自社の業績を的確に把握するためのツールを5回にわたってご紹介いたします。
第2回目は、過去から当期までの状況を全体的に理解するための「年計グラフ」です。
1.年計グラフ(売上高・粗利益・固定費・人件費)
売上高や利益の過去一年間分の「移動年計」を集計し、視覚化したものが「年計グラフ」です。
年計グラフ内の各ポイントは、過去一年間の数値を集計したものになります。
例えば、赤色の売上高の当期の10月のポイントには、前期の11月から当期の10月までの12か月間の売上高が集計されています。各月の、これらのポイントとポイントとの間を実線でつなぎ、折れ線グラフにしたものが年計グラフです。
年計グラフは、いわゆる「移動年計」を視覚化したものですので、季節変動を消して会社の趨勢的な動きを確認することが可能です。
普段は見慣れないグラフですが、一年のうち、夏や冬など一定の時期に売り上げが集中するような、季節変動が大きい業種の会社であれば、会社が、今、どちらの方向に向かっているのかを理解するには、とても役に立つグラフになります。
確認するポイント
年計グラフ(売上高・粗利益・固定費・人件費)で確認していただきたい事項は以下のとおりです。
① 売上高・粗利益・固定費・人件費の折れ線グラフが増加しているのか、あるいは、減少しているのか
② 粗利益の年計グラフは、売上高の年計グラフと連動して動くはずであるが、イレギュラーな動きをしていなか
③ 固定費・人件費の年計グラフは、売上高に関係なく一定であることが多いが、イレギュラーな動きをしていないか
2.年計グラフ(経常利益)
経常利益の年計グラフは、上述した、売上高・粗利益・固定費・人件費の年計グラフと考え方は同じです。
上述したとおり、年計グラフは、グラフ内の各ポイントにおいて過去一年間の数値を集計したのです。
経常利益の年計グラフであれば、過去一年間の利益を集計していますので、決算を毎月行っていることと同義になります。
当期の翌月以降の利益が前年と全く同じであれば、当期末の経常利益の着地点は、当月の経常利益の年計グラフの数字と同じになります。当期の決算を見据えていくに当たって、翌月以降の動きをどうすべきかを判断する、ひとつの材料として利用することができます。
確認するポイント
年計グラフ(経常利益)で確認していただきたい事項は以下のとおりです。
① 当月の数字が、当期の目標利益に対してどのあたりに位置しているのか
② 翌月以降の動向が、前年に比べてどのように動くのか
(文責:税理士法人FP総合研究所)