【No327】税込価格の表示(総額表示)の義務化!

 令和3年4月1日から、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う事業者は、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含む)を含めた価格(総額表示)を表示するがことが義務化されました。

1.総額表示義務の概要

 総額表示義務とは、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、税込価格(消費税額及び地方消費税額を含めた価格)を表示することで、平成16年4月1日から義務化されているものです(消費税法(昭和63年法律第108号))。

 この義務化は、税抜価格のみの表示ではレジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら「税抜表示」の事業者と「税込表示」の事業者が混在しているため、価格の比較がしにくい点などを踏まえ、事前に「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするという消費者の利便性に配慮する観点から実施されたものです。

2.なぜ今になって総額表示義務?

 では、なぜ今になって総額表示義務が取り上げられているのでしょうか?それは、平成26年4月1日(消費税率8%)及び令和元年10月1日(消費税率10%)の二度の消費税率の引上げに際し、消費税の円滑で適正な転嫁を確保することや事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、「消費税転嫁対策特別措置法(平成25年法律第41号)」により特例が設けられていたからです。この特例では、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、一定の要件(現に表示する価額が税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合)の下、税込価格を表示することを要しないこととされていました。

 よって、この特例が失効した後の令和3年4月1日からは、消費者に対して価格を表示する場合には、消費税法の規定に基づき、あらためて税込価格を表示することが必要となったのです。

3.対象となる取引と表示媒体

 総額表示義務は、事業者が不特定かつ多数の者に、あらかじめ販売する商品等の価格を表示する場合に税込価格を表示することを義務付けるものであり、消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときに総額表示が義務付けられています。

 専ら他の事業者に商品の販売を行う場合、より具体的には、商品又はサービスの内容、性質から、およそ事業の用にしか供されないような商品の販売又はサービスの提供であることが客観的に明らかな場合、すなわち事業者間の取引は総額表示義務の対象とはなりません。

 また、対象となる価格表示は、商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビによる広告など、消費者に対して行われる価格表示であれば、それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず、総額表示が義務付けられています(口頭による価格の提示は、これに含まれません)。

 ただし、総額表示義務の対象となるのは、あらかじめ価格を表示する場合であり、価格表示をしていない場合にまで税込価格の表示を義務付けるものではありません。例えば、メーカーの供給する商品について、希望小売価格を表示する場合や、値引き販売の際に行われる価格表示の「○割引き」あるいは「○円引き」とする表示自体は、総額表示義務の対象となりません。

【例①】会員制施設の会員向け商品・サービス

 会員制のディスカウントストアやスポーツ施設(スポーツクラブ、ゴルフ場)など会員のみを対象として商品やサービスの提供を行っている場合であっても、その会員の募集が広く一般を対象に行われている場合には、総額表示義務の対象となります。

【例②】取引の相手方に交付する請求書・領収書等

 取引に際して相手方に交付する請求書、領収書等における商品の価格の表示は、不特定かつ多数の者にあらかじめ価格を表示しているものではないため、総額表示義務の対象となりません。

【例③】量り売りなどの単位ごとの表示

 精肉等の量り売りなど、一定単位で価格表示をすることにより、最終的な取引価格そのものではないが、事実上、その取引価格を表示しているに等しいものについては、その単位ごとに消費税を含む価格表示を行う必要があります。ただし、あらかじめパッケージされた商品(プリパック商品)に貼付されるラベル表示(「単価」、「量」及び「販売価格」)においては、プリパックされた商品の「販売価格」自体が総額表示義務の対象となるため、ラベル上の「単価」表示そのものは総額表示義務の対象となりません。

4.具体的な表示方法

 総額表示義務は、その商品の「税込価格」を表示することを義務付けているものであり、税込価格を表示する際に「税込価格である旨」の表示は必要ありません。また、税込価格に併せて「税抜価格」「消費税額等」「消費税率」等が表示されていても差し支えありません。

【例】税込価格11,000円(消費税率10%)の商品の場合

① 11,000円

② 11,000円(税込)

③ 11,000円(税抜価格10,000円)

④ 11,000円(うち消費税額等1,000円)

⑤ 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)

⑥ 11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10%)

⑦ 10,000円(税込価格11,000円)

(注)総額表示であっても「税抜価格」を基に計算するレジシステムを用いることは認められています。その際に、税込価格について1円未満の端数が生じるときは、当該端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても、当該端数処理を行わず、円未満の端数を表示することも認められています。

出典:財務省「事業者が消費者に対して価格を表示する場合の価格表示に関する消費税法の考え方(令和3年1月7日)」

(一部加筆修正)

(文責:税理士法人FP総合研究所)