【No999】住所等変更登記の義務化とスマート変更登記

所有者不明土地に対する対策として令和6年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請が必要となりましたが、令和8年4月1日からは不動産の所有者(所有権の登記名義人)に関する氏名・住所に変更があった場合の変更登記も義務化されることになります。今回は、義務化の内容と義務化に併せて始まるスマート変更登記という制度について紹介します。

(1)住所等変更登記の義務化について

令和8年4月1日から、不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、住所や氏名・名称に変更が生じた日から原則として2年以内に、その変更を登記簿に反映させるための登記申請を行わなければなりません。なお、この義務化は施行日(令和8年4月1日)より前に生じた変更にも適用され、施行日前に変更があった場合は令和10年3月31日までに変更登記を行う必要があります。  

正当な理由なくこの登記義務を怠った場合、5万円以下の過料の適用対象となります。ただし、登記官が義務違反の事実を把握しても、直ちに裁判所への過料通知を行うことはなく、裁判所への過料通知は、義務に違反した者に対し相当の期間を定めて義務の履行を催告したにもかかわらず、正当な理由なくその期間内に申請・申出がされないときに限られます。この場合の正当な理由の例示として、法務省のHPでは下記のケースが挙げられています。

・検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合

・行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合

・住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

・住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

・住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

(2)スマート変更登記について

変更登記の義務化による不動産所有者への負担を軽減するために、スマート変更登記というサービスが利用可能となります。一定の手続きを行えば、手続き後は法務局が職権で住所等変更登記を行い、住所等の変更があるたびに自身で登記申請をする必要がなく、義務違反に問われることがなくなります。

① 個人の手続きの流れ

(ア)「検索用情報の申出」を法務局に対して行う

(イ)申出後は定期的に法務局が住基ネットの照会を行い、住所等の変更の有無を確認

(ウ)変更があった場合には、変更登記をしてよいかの確認メールを送信

(エ)変更登記を承諾する旨の回答があった場合には、法務局で順次変更登記を行う

② 検索用情報の申出について

(ア)令和7年4月21日より前に所有権の名義人となっている場合

令和7年4月21日以降に「かんたん登記申請」のHPから、所有者の生年月日、メールアドレス、不動産の地番等の情報を入力などすることで、Web上で申出が可能です。(電子証明書不要)

また、書面での申出も可能で、所定の様式の申出書を作成し、不動産を管轄する法務局に提出します。なお、管轄の異なる複数の不動産を所有している場合、いずれかの不動産を管轄する法務局にまとめて申し出ることができます。

(イ)令和7年4月21日以降に所有権の名義人となる場合

登記申請の際に、申請書に新たな所有者の氏名、住所に加え、氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレス等を併せて記載して申請することで申出ができます。

③ 法人の手続きの流れ

(ア)「会社法人等番号の登記」を行う

(イ)商業・法人登記上で住所等に変更があった都度、不動産登記のシステムに通知する

(ウ)上記通知を受けて、法務局で順次変更登記を行う

④ 会社法人等番号の登記について

(ア)令和6年4月1日より前に所有権の名義人となっている場合

「会社法人等番号の申出」(一定の事項を記録した情報をオンラインで送信または一定の事項を記載した申出書を管轄登記所に書面で提出)をしていただくことで、会社法人等番号が登記されます。

(イ)令和6年4月1日以降に所有権の名義人となる場合

登記の申請の際に、申請書に新たな所有者の名称、住所に加え、会社法人等番号を併せて記載して申請することで会社法人等番号が登記されます。

⑤ その他

(ア)海外居住の個人、会社法人等番号がない法人について

海外居住の個人、会社法人等番号のない法人については、法務局で住所等の変更の事実を確認できないため、スマート変更登記は利用できません。 

(イ)費用

 スマート変更登記を行う場合には登録免許税などの費用はかからず、無料で行うことができます。

(文責:税理士法人FP総合研究所)