【No997】所得控除の誤りやすいポイント

令和6年分の所得税の確定申告については、令和7年3月17日(月)が提出期限でしたが、皆様、申告はお済でしょうか。

今回は所得控除について、誤りやすいポイントについてまとめましたので、参考にしていただき、誤りがあった場合には、更正の請求や修正申告を検討しましょう。

1.医療費控除

<事例①>

保険等により補填される金額のうち未だ受領していないものを医療費の額から控除していない。

<取り扱い>

申告段階で未収のものであっても、見積もりにより控除します。なお、出産手当金、傷病手当金などの給付金は補填金に該当しないので考慮する必要はありません。

 

<事例②>

がんと宣告されたことを保険事故として支給される保険金を、補填金の額として医療費から差し引いている。

<取り扱い>

医療費の補填を目的とする保険金にあたらないため、医療費から差し引く必要はありません。

 

<事例③>

インフルエンザワクチンの予防接種などの一定の取組に要した費用を特定一般用医薬品等の購入費に含めている。

<取り扱い>

一定の取組に要した費用自体は、セルフメディケーション税制の対象となる支払には該当しません。なお、当該特例の対象となる支払とは、特定一般用医薬品等の購入費用に限られます。

 

<事例④>

生計を一にする親族のために特定一般用医薬品等購入費を支払い、セルフメディケーション税制の適用を受ける場合、生計を一にする親族も一定の取組を行うことが必要と考えている。

<取り扱い>

一定の取組は、セルフメディケーション税制の適用を受ける者がその適用を受ける年分に行っていることが要件とされているため、生計を一にする親族が行っていることは必要ではありません。

2.社会保険料控除

<事例>

控除対象配偶者である妻の年金から差し引かれた介護保険料又は後期高齢者医療保険料を、夫の社会保険料控除として計算した。

<取り扱い>

社会保険料控除は、「居住者が、…支払った場合又は給与から控除される場合…」とされていることから、妻の年金から差し引かれた介護保険料又は後期高齢者医療保険料を夫の社会保険料控除の対象とすることはできません。

なお、後期高齢者医療保険料については、妻の後期高齢者医療保険料を、夫の口座から振替により支払うことを選択することができることから、その選択をして夫の口座から振替により支払った場合には、夫の社会保険料控除の計算に含めることができます。

※妻の介護保険料が特別徴収(年金から天引)されている場合は、本人の申出により、特別徴収から普通徴収(現金納付又は口座振替)への変更はできないため、妻の介護保険料を夫の口座から振替により支払うことはできません。

ただし、妻の介護保険料が普通徴収されている場合は、市区町村等へ一定の手続きをすることにより、妻の介護保険料を夫の口座から振替により支払うことができます。

3.生命保険料控除

<事例>

旧一般生命保険料12万円、旧個人年金保険料18万円、介護医療保険料15万円を支払った場合、それぞれ5万円、5万円、4万円の限度額の合計(14万円)を生命保険料控除としている。

<取り扱い>

新(旧)一般生命保険料、新(旧)個人年金保険料及び介護医療保険料の控除額の合計額が12万円を超えた場合、生命保険料控除額は12万円が限度となります。

4.寄附金控除

<事例>

公益社団法人等に対する寄附金について、当初の確定申告で、税額控除を適用していなかったが、更正の請求において、税額控除を適用して計算を行っている。

<取り扱い>

寄附金控除に関する税額控除は当初申告が要件となっていることから、当初申告において所得控除の適用を受けていた場合、更正の請求で税額控除に選択替えすることはできません。また、当該寄附金を当初申告において申告していなかった場合も、税額控除を受けることはできません。

5.障害者控除 

<事例①>

精神障害者保健福祉手帳の交付を受け、障害等級が2級である者が、特別障害者に該当するとして、40万円の障害者控除をしている。

<取り扱い>

精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者は、障害等級が1級の場合に特別障害者となります。

 

<事例②>

介護保険法により要介護認定を受けたことを理由に、障害者控除を適用している。

<取り扱い>

要介護認定を受けたことのみで、障害者控除の対象とはなりません。ただし、障害の程度が障害者に準ずるものとして、市町村長等から認定を受けている者(「障害者控除対象者認定書」が交付されている者)は適用があります。

※市町村長等とは、市町村長又は特別区の区長をいいますが、社会福祉事務所が老人福祉法第5条の4第2項各号に掲げる業務を行っている場合には、社会福祉事務所長を指します。

 

<事例③>

年少扶養親族(扶養親族のうち、16歳未満の者をいう。)については、(特別)障害者控除が適用されないと考えている。

<取り扱い>

障害者控除の規定は、「居住者の同一生計配偶者又は扶養親族が障害者である場合」とされているので、16歳未満の扶養親族(扶養控除の適用のある控除対象扶養親族に該当しない。)が(特別)障害者に該当する場合には、障害者控除(27万円・40万円・75万円)の適用を受けることができます。

 

<事例④>

配偶者特別控除の対象となる配偶者が、身体障害者(2級)である場合、障害者控除の適用もあると考えている。

<取り扱い>

障害者控除の対象となるのは「同一生計配偶者」であり、配偶者特別控除の対象となる配偶者は所得がありこれに当たらないため、障害者控除の適用はありません。

※配偶者自身の所得税の計算上、障害者控除を受けることができます。

6.ひとり親控除・寡婦控除

<事例>

令和6年分の確定申告に当たり、合計所得金額が500万円超の者が、ひとり親控除又は寡婦控除を適用している。

<取り扱い>

ひとり親控除又は寡婦控除(令和2年分以後)のいずれかについても、本人の合計所得金額が500万円以下であることが適用要件の一つとされています。

(文責:税理士法人FP総合研究所)