【No992】暦年課税及び相続時精算課税の贈与税の計算方法~複数の贈与者から贈与を受けた場合~

令和5年度税制改正により、令和6年分の贈与から相続時精算課税制度に新たに110万円の基礎控除額が設けられることになりました。これに伴い、相続時精算課税を選択される方も増え、贈与者ごとに異なる課税方法を選択するケースなども想定されます。そこで、今回は複数の贈与者から贈与を受けた場合の贈与税の計算方法及び基礎控除の取扱いについて解説します。

1.暦年課税と暦年課税

複数の贈与者から暦年課税による贈与を受けた場合の基礎控除額は、受贈者1人につき110万円の基礎控除となるため、全体の財産額から110万円が控除されます。

《具体例(贈与者Aから140万円及び贈与者Bから110万円の贈与を受けた場合)》

なお、暦年課税の贈与税率は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の受贈者が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた財産(特例贈与財産)は、特例税率により贈与税額の計算を行い、特例贈与財産以外の贈与財産(一般贈与財産)は、一般税率により贈与税額の計算を行いますが、同一年中に一般税率・特例税率の対象となる財産を両方取得した場合の贈与税額は、下記により計算されます、

《具体例(贈与者Aから100万円及び贈与者Bから400万円の贈与を受けた場合)》

《一般贈与財産に対応する贈与税額》

①合計贈与財産について一般税率を適用して計算した金額

(5,000,000円-1,100,000円)×20%-250,000円=530,000円

②一般贈与財産に対応する贈与税額

①×1,000,000円/5,000,000円=106,000円

《特例贈与財産に対応する贈与税額》

①合計贈与財産について特例税率を適用して計算した金額

(5,000,000円-1,100,000円)×15%-100,000円=485,000円

②特例贈与財産に対応する贈与税額

①×4,000,000円/5,000,000円=388,000円

2.暦年課税と相続時精算課税(令和6年1月1日以降の贈与)

1人の特定贈与者から相続時精算課税による贈与及びもう1人の贈与者から暦年課税による贈与を受けた場合の基礎控除額は、相続時精算課税の基礎控除110万円と暦年課税の基礎控除110万円が適用できますので、年間で最大220万円控除できます。

《具体例(特定贈与者Aから140万円及び贈与者Bから110万円の贈与を受けた場合)》

3.相続時精算課税と相続時精算課税 (令和6年1月1日以降の贈与)

複数の特定贈与者から相続時精算課税による贈与を受けた場合の基礎控除額は、受贈者1人につき110万円の基礎控除となり各特定贈与者からの贈与額に応じて下記算式により按分することとなります。

《基礎控除額の按分》

なお、相続時精算課税の特別控除2,500万円は、贈与者1人につき2,500万円の特別控除となるため、累積で最大5,000万円控除できます。

《具体例(特定贈与者Aから140万円及び特定贈与者Bから110万円の贈与を受けた場合)》

4.相続時精算課税を選択する場合の手続

相続時精算課税を選択する場合は、贈与税の申告書の提出期間内(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間)に、受贈者が納税地の所轄税務署長に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要がありますので、令和6年分の贈与から相続時精算課税を選択する場合は、令和7年3月17日(月)までに手続をする必要があります。なお、相続時精算課税選択届出書には、次の書類を添付する必要があります。

受贈者の戸籍の謄本または抄本その他の書類で、次の内容を証する書類

①受贈者の氏名、生年月日

②受贈者が贈与者の推定相続人または孫であること

(文責:税理士法人FP総合研究所)